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僕はキャプテンのどど丼のレビュー・感想・評価

僕はキャプテン(2023年製作の映画)
4.2
今年度アカデミー国際長編映画賞にもノミネートされた、セネガルに住む二人の青年が夢のために欧米へ密航を試みるお話。大筋はタイトルからイメージできるような青年の寓話チックな成長物語に見せかけているが、不法移民に繋がる密出国問題を下敷きにした社会派テーマが強く、全体として重苦しい印象を残す。

何がグロいって、本作を鑑賞するような富裕な観客は、仮に彼らの密航が成功したとしてもその先に待ち受ける運命が十中八九明るい物ではない事が容易に想像できてしまう事。16歳の青年たちが持つ欧米への憧れは純粋な夢に満ちていて、観客側はそれが幻想である事を初めから知った状態で彼らの旅を見届けなければならない。結末の詳細は伏せるが、これだけ歪んだ現実を見せるのであればもう一歩先まで踏み込んで欲しかった気はする。ただ、あえて描かずとも分かるよな……という製作側のメッセージを強めているとも捉えられるので、難しいところだ。

今年度のオスカー国際長編枠で唯一日本での配給が決まっていない作品だが、それも納得なほど日本受けしなさそうではある。腐ってもマッテオ・ガローネ作品、是非日本でも公開の上、本作を通して議論が交わされる事を切に願う。
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