プロパガンダだと決めつけて見過ごされそうなポーランドの重要作品。思ったより全然全人類の問題だった。"政府が隠そうとしたものを映画で明かそう"。そんなアグニェシュカ・ホランドの気概と一個人としての道徳的義務感が伝わる。ベラルーシとポーランドの国境、まさに"記録を禁じられた国境"で今何が起きているのか、EUや難民問題に関心がある人でも見過ごしそうなコアトピックながら"人命がかかった判断を迫られるとき、人はどこまで善良であり得るか"という全人類に普遍の究極のテーマであり、結局は全人類が見る価値のある群像劇になっていたのがさすがだと思った。深い沼にまみれた危険な森の奥で人知れず命が消えていく現実。難民の家族だけでなく支援活動家たちの視点も非常に大事だと感じた。個人の努力で世界が変わるとは思わないけど悪は誰の中にも芽生える可能性があるが、それを必要な時にコントロールせずに放棄する人たちで世界が溢れてしまったら、助かる命も助からない。大したものだと思いますね、この湧き上がる義務感で行動を起こせる人たちは。
