このレビューはネタバレを含みます
星の数は、みんなに知ってもらいたい度。
2021年、ベラルーシ->ポーランド国境。ここを通れば比較的楽にEU圏へ亡命できると信じた難民たちのお話。
乳飲み子を含む幼い子供3人と、老齢の祖父が居るシリアからの6人家族と、道中知り合ったアフガニスタンからの女性の難民一行。妊娠している妻を持つ若きポーランドの国境警備隊員、難民を助けようとする活動家が少しずつ関わりながら進むストーリー。
全編、モノクロ。カラーだったのはオープニングの緑美しい森の俯瞰図一瞬だけ。なかなか見づらいモノクロの森は、夜はもちろん、昼間でも肌寒く困難な道のりを実体験してるような感じでした。
ベラルーシの警備隊に捕まりポーランドに押し返される、そしてポーランドの警備隊にも、文字通り有刺鉄線越えに投げられる…
ベラルーシ政府がEU諸国に混乱をもたらしたいために、大勢の難民をポーランドに「人間兵器」として送り込んだ政策。ポーランドも非常事態宣言を理由に難民の受け入れを拒否し、救助隊や医師、ジャーナリストをシャットアウトしたの。
実はすごい恥ずかしいんだけど、こんな最近の話とは、観るまで思ってなくて、第二次世界大戦くらいのことかと思い込んでた。いやいやいや。コロナ禍になって一年以上が経ち、家に閉じこもって生活していたあの頃、世界ではこんなことが起こっていたなんて。
日本は島国で、国境を接する国がないから、国境付近に住む人々の気持ちなんて、こうやって映画を通して観ないと、気付けないと思う。沼に落ちた難民を助けた精神科医のユリアが、友人に車を借りようとした時。それを断った友人の気持ちも、なんとなくわかる。でも一方、ユリアのように、私財を投じて救助活動に取り組むようになる人や、家を提供する人、荷物に紛れさせてあげる人と、近隣住民の行動。尊敬する。私だったらできるか？
そしてエピローグは、ウクライナからの難民を受け入れるポーランドの国境のシーン。胸が締め付けられる。ただ生まれた場所の違いによって罪もない人々が家を失いさまよう世界が、いかに理不尽でやるせないか。平和ボケしている私に、ガツンと痛いゲンコツが落ちたのでした。
映画館で観るジャンルじゃないんだけど、U-NEXTのポイント消化のために。目を背けなくなる辛いお話だけど、観て、知ることができて、本当に良かったと思う。
