散歩

人間の境界の散歩のレビュー・感想・評価

人間の境界(2023年製作の映画)
4.2
保守とかリベラルとか関係なく思想やシステムの中で生きているほぼ全ての観客を狙い打っている作品でした。まるでボールのようにという言葉が比喩にならないくらいの難民たちの扱いには言葉が見つからないし、もし自分が警備隊員であの状況に慣れきってしまっていたらと思うと、本当に恐ろしくなってしまう。後半は登場人物たちが絡み合ったり見ごたえのあるアクションもあったりしてやや劇映画っぽい展開になっていって、個人的にそういう展開をする作品は好きではない部分があるし「最後まで現実を突きつけてよ!」って思ったりもしてきたんですが、今作に関しては中盤までの作風で最後までいかれてしまっていたら絶望感と無力感に打ちのめされ切って世界の何もかもが信じられなくなっていたかもしれないですね。システムの一部や警備隊・活動家・難民という肩書ではなくそれぞれ人格を持った個人たちが少しだけ希望を持った描かれ方をした終盤を観ながら、「こういう映画は安易に泣いてはいけないはずだ」と自分に言い聞かせながら、やっぱり込み上げるものがありました。

白黒にした本当の意図はちょっと分かりませんが、個人的にはそのお陰で最後まで直視し続けれられる感じもありました。友人(?)が映像を見られないってシーンがありましたが少しだけその気持ちも分かってしまうんですよね、残念ながら。
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