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DOGMAN ドッグマンのBremingerのレビュー・感想・評価

DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)
4.1
新作は「ANNA」以来とかなり久々のリュック・ベッソン最新作。規格外のダークヒーロー爆誕という宣伝文にまんまとつられて鑑賞。

ダークヒーローという点は謎の押し売りだったなと思いつつも、1人の男と犬との関係性や悲哀に満ちた人生を精神科医と共に辿っていくという静かな物語で意外でしたが、その意外性が面白さに繋がっていました。

子供の頃に暴力的な父親に監禁され、少しでも逆らったりすると銃で撃たれたりするなど酷い目に遭っていた幼少期のダグラスがその場にいたワンコたちと共に協力して状況を打破していく子供パートと、成人して大学を卒業して犬のブリーダーとして活動しながら、かつて演技やメイクを教えてくれた恩人の元に訪れると同時に現実を知ることになる青年パートと、ワンコたちと共に悪人を陰ながら成敗していく現代パートと大きく分けて3つの物語を現在のダグラスが語っていく作品でした。

父親がハイパークズなので、自分の思い通りにいかないとすぐに暴力を振るったりしますし、兄はすぐに父親に報告したりでダグラスが圧倒的に罰を受けていく様子はかなり辛かったです。
でも兄にはしっかりと報いを受けさせたのはスッキリしました。このシーンはワンコたちの連携っぷりが光っていてちょいコメディになっていた気がします。

青年期は恋をした年上の女性に旦那ができてしまった事に対してのショックと車椅子生活の自分にやるせない気持ちになって暴れまわりながらもワンコたちが宥めてくれたおかげでなんとか次の道を開拓する流れも成長が強く感じられました。

物語の肝になる会話シーンでは精神科医も元夫とのトラブルがあるからか、心にある傷に共感をしてくれつつも、結果的に犯罪に繋がっているというところにはしっかり叱ってくれるところに好感を持てました。ダグラスもしっかりと話を聞いてくれる彼女には心を開いて喋っていたので、ここの関係性がとても素敵でした。

ワンコたちがどの子も本当にお利口さんで見ていて癒されました。でも悪人たちを成敗する時は容赦なく襲いかかっていくので、そこは中々に恐ろしかったです。
連携プレーで一人一人仕留めて行ったり、敷いてるトラップを駆使してとっ捕まえてトドメを刺したり、ダグラスの元へと誘導したりと本当に従順かつスマートな行動に惚れ惚れしました。

ラストシーンはイエスの前で力尽きたところに街中のワンコが集まってきてある種の大団円であり、でも悲しさは拭えないラストという観終わったあとのなんともいえない不思議な感じがそこにはありました。

ケイレブ・ランドリー・ジョーンズが好演すぎました。幼少期のトラウマやうまくいかなかったこれまでの人生を引きずる様子がこれでもかと伝わってきましたし、犯罪をしていくというのではなく、悪人のプラスをプラマイゼロに戻す姿勢も好きでした。
ドラッグクイーンになって不安定な足元を庇いながら一曲歌い切る様子も最高でした。カッコ良すぎます。

これは日本での宣伝文が良くも悪くも邪魔をしてしまっていたなと思いました。
もちろん自分みたいにダークヒーローに釣られて観にくる人もいると思いますが、普段ヒーロー映画をメインに観にくる人が今作を観たら確実に困惑すると思いますし、こういう静かな物語が好きな人はこの宣伝文ではなかなか寄りつかないだろうなと思いました。とても良い作品なのにここが本当に惜しいです。
口コミでどんどん広がっていってくれ〜と願っています。
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