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DOGMAN ドッグマンのsowhatのネタバレレビュー・内容・結末

DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

【愚かで醜い人間たちを賢い犬たちが懲らしめる悲しい寓話】

心なき人たち。
父、妻と次男と犬に暴力を振るう愚か者。
兄、卑怯者でDV親父の共犯のくせに神の名をかたる愚か者。
役人、赤字を盾に犬保護施設を閉鎖する愚か者。
ヤクザ、子分を引き連れ弱いものから金を巻き上げる愚か者。
金持ち女、富を独占しそれを誇示する愚か者。
保険会社の調査員、嘘と銃で秘密を暴こうとする愚か者。
拘置所の夜勤職員、鍵をかけてドッグマンを閉じ込めている愚か者。

心ある人たち。
優しく弱く音楽好きの母。
養護施設でシェイクスピア劇を教えてくれた先生。
ドッグマンにヤクザ成敗を依頼する若者。
ライターをくれたパトカーのおじさん警官。
ドッグマンを受け入れるキャバレーのおじさんとドラァグクイーン達。
拘置所で面談を重ねるシングルマザーの精神科医。自身も夫から暴力を振るわれ離婚している。

そして、ドッグマン。
父と兄からの酸鼻を極める虐待と、犬と意思疎通ができる特殊能力。
彼なりの正義と犬たちを守るために犯罪を重ねる、愚か者。
ただ、実行犯は犬たちなので裁きようがない。
世界は彼を受け入れない。
居場所は隠れ家とキャバレーの舞台の上だけ。
その居場所も奪われてしまう。
この世界に彼の居場所はもうない。
犬たちに囲まれ犬の世界へ旅立つ男。

「人間を知るほど、犬への愛が深まる」
「犬たちの唯一の欠点は、人間を信賴することだ」
犬を飼ったことがある人なら、ドッグマンの言葉につい頷いてしまうのではないでしょうか。

最近のフィクションにありがちですが、本作も「男性」と「アメリカの国旗」は暴力と愚かさの象徴として描かれており、ドッグマンは女装することで自分の中の「男性性」を否定しようとしているように見えます。

ドッグマンを演じたCaleb Landry Jonesさんの静かな熱演は素晴らしいです。強いて言えば、エディット・ピアフのシャンソンも彼に歌って欲しかった!

ドッグマンが扮するのは、エディット・ピアフ(La Foule)、マレーネ・ディートリッヒ(Lili Marlene)、マリリン・モンロー(I Wanna be Loved by you)。この3人が男たちを懲らしめるという構図も洒落ています。

あと、ドッグトレーナー達の奮闘が楽しいmaking動画も必見です(https://www.youtube.com/watch?v=EZ88c8SQB7c)。
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