近頃映画館で出会う人物に心奪われてばかり。切なすぎて少し背中が丸くなった帰り道。でも警備のおっちゃん可哀想だよな。
一応ダークヒーローものではあるかもしれないが、マーベルやDC的派手さは無い。ネジが飛んでる奴の暴れっぷりを見て楽しむような内容じゃないし、展開もかなり控えめ。一応特殊能力らしきものも有るが、身体的なハンデがでかい。代わりに犬がツヨツヨで殆どギャグ。ダグは強固な理論武装もせず、壊れた倫理観を有してもいない。根が常識人。過去がヘヴィすぎるだけで。エヴリンとの共振と対比。
宗教、信仰とは何なのか。神を信じ、崇める者が何故他者を害することができるのか。その矛盾、痛みに激しく燃えるものがある。
惜しむらくは、色々と甘い点があったのが否めないこと。それでも非常に引き込まれた。そしてワンちゃんが可愛かった。
以下、劇中で明示されないことを補足しておきたい。
楽曲に合わせてクイーンが舞台上でリップシンクし、観客はそれを見て楽しむというのは、ドラァグカルチャーに於いて現代まで受け継がれているパフォーマンスである。
ダグが自身の性自認や、性的嗜好について語るシーンは無いが、仮にトランスジェンダーであっても同性愛者は存在する。とはいえ、ダグが異性愛者でないと言い切ることもできない。バイセクシャルやパンセクシャル、ジェンダーフリュイド、ノンバイナリー等、性別や性自認に関しては多様なレイヤー、グラデーションが存在する。
ドラァグカルチャーは一先ず、ジェンダーに関する知識はより広く共有されるべきものであると感じる。