4Kリマスター版公開に伴い劇場にて観賞。
前回の劇場版同様、初見での感想となる。
滅びの美学と人間愛がスクリーンから決壊するほどに溢れ出ており、間を持たせた情感たっぷりの演出は観ている側に多大なエネルギーを消費させるものであった。実際私はとてつもなく疲れた。むろん良い意味で。
4K化の恩恵は前作以上に分かりやすく感じられ、特に初めてガトランティスの都市帝国の威容があらわになるところは高精細でエッジの立った線が都市帝国の立体感を際立たせており、まるで3Dかと見まごうほどの作画の強さに惚れ惚れしてしまった。
本作はネームドキャラを容赦なく散らせる破滅型のドラマでシリーズ化を前提としていないある種のワガママな作りだからこそ許された禁じ手的な手法であり「ヤマトを終わらせる」「ヤマトを伝説にする」という作り手のエゴイスティックな野望がひしひしと感じられる。その熱量とお出しされた怒涛のドラマに私は終始圧倒されてしまった。
前作では戦争狂のイメージが強かったデスラーも、本作では亡国ガミラスを思い、散っていた同胞に報いるため、宿敵であり誇り高き戦士たちと認めたヤマトを討つべく自らの命と誇りをかける姿は良い方向の変化であった。
本作のデスラー観が彼を人気の敵役にした要因であり、それはシリーズ化していったあとも脈々と受け継がれるデスラーの個性だったのだと想像できる。
本作は正真正銘、直系の続編であるはずなのだが、その後TVアニメで『ヤマト2』という設定や結末が異なる生存ルートに分岐しさらにシリーズ化していったことを考えると、いわゆる「ifルート」と呼ばれる手法の元祖となってしまったのかと思わないではない。
多くのヤマトファンが本作のあまりにも潔い破滅と自己犠牲と人間愛のストーリーに惚れ込み、神話を見ているかのような静謐で壮大なラストシーンはきっと当時の観客の胸に深く刻まれてたことだろう。
本作『さらば』がヤマトシリーズにおけるマスターピースな一作として伝説となっているのも強く頷ける。