やかましい小娘

さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち 4Kリマスターのやかましい小娘のレビュー・感想・評価

3.0
後半は、ヤマトが好きな人は相当怒るだろう事を書いています。でも、私はきちんと書かなきゃいけないと思ったし、正直にここのレビューを書いているので、それもきちんと書いておくことにしました。

まず、作品始まってすぐの印象は、作画、メカ、すごーーーーーーーーい!!!!前シリーズから4年、制作側が「描きたい!!!!」と思っていたものがぎっちりつまっていて、もうワクワクが止まらなかった。
ヤマト以外の戦艦の描き込みや、各種設定、アンドロメダとすれ違う時の小さな舟、砲弾の発射方法やビームひとつとっても段違いで、本当に興奮した。
私は前シリーズの作画も大好きで、週刊連載のアニメでよくぞここまで!!!と思っているのでそれはそれで好きなんだけど、今作はすごい。この4年でこんなにアニメって進化するの???とでも言うような。
ヤマトが発進する時の一連の流れ、あれ最高だよね、ずっとみんな考えてたんだろうな!って思った。リアリティーに溢れた空想。最高にかっこいいフィクションだよ、ほんとすごい。(すごいしか言ってない)

前作から続投のキャラクターたちも愛おしい。私は何を隠そう真田志郎が大好きなんですけど、キャラクターの魅力は前作からさらにパワーアップしており、好きが止まらなかった。沖田の子供たち……苦難の旅をのりこえたあんたたちが、オラァ大好きだ……

ここでデスラーですか!!!!
デスラーのヤマトと古代への執着ヤバない、それだけじゃなくてデスラーへの制作側の執着も感じました。デスラーで短編映画作れますよ、みなさん。

と、ここまで本当に、テンションMAXで見ていたんです。でも、終盤に、一気に冷めてしまった。

こんなにショックに思ったことはない。ここでヤマトは完全に私の中で一線超えてしまったというか、私は必死にヤマトを擁護していたんだなぁって、今更気づいてしまって自己嫌悪。

ラストやラストに向かう展開は、完全に「あの花が咲く丘で、また君と出会えたら」と同じじゃん。戦争賛美もいいところだよって。
ヤマトはやっぱり、「大和」なんだと、そう思い出したのだ。今更だよ、そんなの、なんでちゃんと気づけないのよ。

ヤマトは反逆のメッセージを背負っていると、何度か制作陣が話していた記憶がある。だけど、大日本帝国の軍艦を元に(これは新旧シリーズで差異がありますが)造られた舟が「反逆」なんて背負えるはずもないんですよ。抵抗の物語じゃない、大和はアジアを蹂躙して帝国主義の暴力の下作られた舟なんだから。アジアをさんざん貧しくして、吸い取った利益で作られた巨大艦なんだ。

終盤、次々と命を落としていく乗組員達、真田さんや齋藤はもちろん、ラストの古代は完全に特攻賛美だ。命を賭して国を守る、吐き気がする。特攻はそんな作戦じゃない、ただただ無謀に、若者の命を刈り取った、愚かで無益な作戦で、彼らは英霊ではなく被害者の文脈で語られねばならないと思っている。
英霊だ、御霊だ、と呼んでいるのは後世生き残った、彼等を死に追いやった側の人間と、それに勘違いしてロマンを感じてる愚かな人間だけだ。
私は、旧シリーズ第1話冒頭で、死んで地球を守る、死んでこそ男だと突っ込む古代守に、最後まで説得し続け、無駄だ、やめろ、生きてこそだ、と語りかけた沖田艦長が大好きだった。その言葉が大好きで、尊敬していた。
だから、古代の脳内の対話であり、実際には沖田ではないものの制作側のメッセージを多分に含んでいると思われる、沖田が古代の命を犠牲にして突っ込めと諭すシーン、あれはありえないと思った。涙なんか一粒も出なかった。沖田艦長はそんなことは決して言わない。けっして、言わない!と、強く思って、虚しく思ったし哀しくなった。

そこから一気にさめて、そして冷静になって考えてみれば、ヤマトが「大和」でなければならない理由もないでは無いか、と思ってしまった。私は、帝国主義の遺物を改造した船にロマンを抱いたのではない。遥か彼方イスカンダルへ、危険な航海に乗り出す乗組員たちそれぞれと、その旅に興奮したんだよ。
監督の過去作とか、あーこれ、山崎貴が実写化したくなるわけだなー、みたいな冷めた気持ちでいっぱい。

それでもヤマトが好きで、このレビューの前半に書いたような所や、各キャラクターのことは大好きだから、どうしたらいいか分からなくて今ほんとに少し苦しい。
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