よしまる

さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち 4Kリマスターのよしまるのレビュー・感想・評価

5.0
昨年のランキングカウントアップ中ですが、20位まで来たところで小休止。
フィル友の@七色星団 さんがレビューされてるのを見て、いてもたっても居られず期間限定特別興行に行ってきました!
七色星団さんありがとうございます!

そして今回は長いです。ネタバレお構いなしです。ご興味のない方はスルーしてくださいw





劇場で映画を観て涙を流すということを初めて体験した作品。当時は小学生だった。

完全新作で箝口令が敷かれ、どんな内容か知らずにただヤマトの諸君と久しぶりに再会できる悦びを味わうために行ったのに、大好きなキャラクター達が次々と絶命していく衝撃たるや。
古代の「死にに行くんじゃない」という言葉を信じて、金ピカになった皆さんと旅立つシーンでは画面が見えないくらいに泣きじゃくったことをはっきりと思い出す。

それから45年。実はテレビ放映やレンタルビデオ、配信含め1度も見返していない。なんならもう観ずに一生を終えようかと思っていた。

ボク自身は特別リベラルでもないけれど、特攻賛美、戦争の美化と言われたら否定できない結末、決まっていた事とはいえ次々に作られる続編、なにより松本零士先生が激怒したとの話もあり、あの作品を観て流した自分の涙は、その時だけのものとして宝箱に閉まっておこうと思ったのかもしれない。

その後、ヤマトをきっかけに松本零士にハマり、単行本は200冊くらい持っていたし、昨年は亡くなられた松本零士先生の「お別れの会」に参列するためだけに東京まで出向くほどに今なお信奉していると言っていい。

その松本氏が「ヤマトの乗組員は生きて帰って来なくちゃいけない、今なお引き揚げられていない大和には無数の髑髏が横たわっていることを知らないのか」「こんな観客を泣かせるための強制的な愛があるか」みたいなことを(オレ要約)言って西崎氏を非難していた。総監督を務めていながら😅

だが本当にあの作品は戦争を美化していたのか?古代くんは生きるためにと言っていたはずだ。やはり死ぬまでに確かめておきたい!!と強く思ってしまったのだ。

果たして開幕。スタンダードサイズなことに驚く。そうか、テレビ放映(宇宙戦艦ヤマト2)への流用が決まっていたから、当時の劇場は貧乏ビスタで流したのか!とか思ったのもつかの間、白色彗星が画面いっぱいに飛び出す。
宮川泰氏のご子息、宮川クインテット彬良氏が高校生の時に弾いて録音したというパイプオルガン。長い、めちゃくちゃ長い、そして怖い。飲み込まれていく小惑星の作画が美しすぎて怖い。これから訪れる恐怖を表すのに、こんな演出をしたアニメは後にも先にもない。絵コンテは全編にわたり安彦良和、絵描きのコンテは説得力が凄い。
そして4Kリマスターの威力。長らく観ていないから比較のしようもないけれど、あまりに鮮明な映像に、あっという間にヤマトの世界の中に身体ごと入り込んでしまう。

古代くんに続いて、相原、雪、佐渡先生と馴染みのキャラが続々登場する。ああ、麻上洋子の声はやっぱり大好きだなぁ、富山敬、永井一郎、青野武、、もう亡くなられた名優達がお馴染みのトーンで演じている、、ん、不思議だ、45年ぶりのはずなのにセリフを一言一句記憶しているぞ。次の展開もわかる、BGMの入るタイミングまで完璧に把握出来ている。なんだこりゃ!

そうか、これはドラマ編LPの仕業だ。もちろんビデオなんてまだ家にはないから、レコードで音を聴きまくる。いま手元には残ってないけれど、きっとカセットテープか何かで聴いていたのだ。それしか説明がつかない。

パンフレットを読むと、なんとこの4Kリマスター、音声はドラマ編LPから拾っているらしい!なんということだ。そりゃ何もかもがそのまんまなはずだ。

しかし音のみならず絵が伴って甦るとほんとうに感慨深い。
ヤマト発進のシークエンス、波動砲、ワープ、1作目でも見た名シーンが極上のクオリティでトレースされる。水や炎の描写、各員の表情、すべてが完璧だ。

金田伊功カットはやはり目立つし、板野一郎の山本明の最期はどうしてもグッとくる(はみ出す左手もあらためて確かめられたw)。湖川友謙、友永和秀、及川博史、姫野美智といった日本の宝物のようなアニメーターが一堂に会するとこんなにも素晴らしい映像が生まれるのだとしみじみする。
森雪のシーンはほとんど安彦良和だそうで、特にラストに艦長席へと抱きかかえていくカットは歌舞伎のようにゆっくりとした時間を堪能出来る。

宮川泰氏の楽曲も最高すぎる。そしてここぞというところにコレしかないというタイミングでキッチリ流れてくれる選曲も隙がない。西崎Pが音楽面でもたらした功績は計り知れない。

と、いくらでも書きたいことが出てしまうのだけれど、やはり特攻玉砕について避けては通れまい。

公開から45年経つとはいえ、太平洋戦争から本作の公開までは33年、そっちのほうが近い。つまりは戦争で肉親を失った人や、実際に戦地で敵兵を殺したことのある人がまだまだ日本にたくさんいた時代だ。
戦争を思い出して共感してしまう人もいれば、忘れたい過去を都合よく美化されて憤る人も多かったことだろう。

だが、当時熱狂したアニメファンは当然戦争を知らない子供たちである。これを見て、特攻を美しいとか思うだろうか。自己犠牲を尊いと思うことと、戦争で命を捨てることをイコールで結べるだろうか。
いまの若い人たちが見てはたしてどのように思うのかがめちゃくちゃ興味深い。

自分とて、古代くんの選択をけして責めることはできないとあらためて思った。
「男には負けると分かっていても行かなければいけないときもある。死ぬと判っていても戦わなければならない時がある。」
これは銀河鉄道999におけるハーロックのセリフ。宇宙戦艦ヤマトの松本零士コミック版では、ハーロックは古代進の兄、古代守だった。
松本イズムの真髄とも言うべきこの言葉は、男女かかわらず、響く人、刺さる人には抗しがたい魔力を持つ。そうでなくても、宇宙戦艦ヤマトという作品そのものが戦記物であり、兵器や戦闘のカッコ良さを描いたSFである時点で今さらである。

もっと言うならば、仮に特攻が回避される結末だったとしてもだ。
地球という星が宇宙のリーダーとして、宇宙全体を平等に愛し、そのためにテレサの祈りに応えなければならないと大義名分を掲げる一方で、肌の色が違うだけの異星人を敵と見るや片っ端から皆殺しにするのはどうなん?て話だ。現実の世界では戦争や紛争がリアルに行われている現在においては、視覚的にもこっちの方がよほど見ていて嫌な気分になる。

これは当時は出てこなかった感想で、悪い奴は悪いから征伐という思考に強い違和感を感じるのも、やはり現在という時代こそなのかもしれない。

作る時代が違えば、観る時代もまた変化し続ける。ただ、少なくとも西崎氏が産み落としてしまった鬼子のような特攻賛美が、例えお涙頂戴の商業主義の産物だったとしても、兵器に憧れることや、仲間のために身を盾にして悪い奴らを撃ち殺すことまでをも含めても、こんな世界はあってはならないと読み替えて語り継いでいくことはできるのではないだろうか。それもまたSFというジャンルにこそ許されたフィクションであるはずだ。

そんなふうに思いながら、やはり幾つかのポイントでしっかりと泣いてきた😭😭

彼らの生き様にあらためて涙したのか、45年前の幼かった自分との邂逅に涙したのか、それはわからなかったけれど間違いなく言える、観に行ってよかった。