ミシンそば

1日半のミシンそばのレビュー・感想・評価

1日半(2023年製作の映画)
3.3
DVで服役した経験がある男が、病院勤めの元妻と交渉役の警官を人質に、元妻の実家に娘を連れ戻しに行く――実話に着想を得た作品と言うが、あらすじだけ聞くとめっちゃアホである。
でも観終わった後の感想は、そうだと決めつけるべきではないなとは思える程度のものにはなっている。

人質事件の首謀者…なんて言っていいのか微妙なくらい行動すべてが杜撰で、行動原理も幼稚なアルタンの能書きには終始辟易させられるし、元妻ルイースと警官のルーカスが見る見る疲弊しているのを追体験する形になる。
被害妄想が強くて人の話を聞かない、その上行き当たりばったりが過ぎるアルタンの言動はずっと不快だが、犯罪者である彼よりもギリギリ勝る程度には言動がクズなルイースの両親が出てきた辺りから本当に収集がつかなくなるんじゃってくらいカオスになってくる(実話がもとだからキレイに収まりはするんだけど)。

基本的に警官ルーカス以外の主要人物はバカかクズかヒスの三種に分類されるため、ルーカスだけが事態を俯瞰し、冷静に対処しようと苦心しているようにも見えやすい構図だが、そのルーカスも過去の行動で家族を引き裂いたことがあって……。
正直この構図は素直に見事だな、と思えた。
単純に、ルーカスの姿が“冷静で理想的な父親像”とはならないところに脚本の練りの深さが見える。

まあ色々感想を並び立てたけど、「とにかく、ちゃんと冷静になって考えれば、大体のことは解決する」んだよな。