みや

ある閉ざされた雪の山荘でのみやのネタバレレビュー・内容・結末

ある閉ざされた雪の山荘で(2024年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

新作舞台の最終オーディションのため、7名の劇団員たちが山荘へ招かれた。「大雪で閉ざされた山荘」というシチュエーションで起こる連続殺人事件のシナリオを実際に演じながら4日間を過ごすように主催者から命じられるが、日を経るごとに参加者が一人ずつ消えていき、疑心暗鬼に陥っていく。

原作は東野圭吾の同名小説。既読。
設定は面白いのにキャラクターが全員薄っぺらくて、原作はあまり楽しめなかった。映画でも登場人物の性格がみんな安直だし、誰に対しても愛着を持てない。
初っ端からギスギスし合う女性陣、それぞれの手法で新人の実力を探る男性陣など人間模様が明快で、だからこそ難しく考える必要なくストーリーに集中できたのは良かったのかも。2日目の朝に吹雪の中でラジオ体操ごっこに勤しむ男3人が微笑ましかった。

オーディションなのか、殺人事件なのか。出ていっただけなのか、本当に殺されたのか。どちらなのか分からないヒリヒリ感は面白いのに、なぜだか緊迫感がずっと無くて物足りない。要所要所でオシャレな音楽や演出が入ると「力を入れるのそこじゃないでしょ!」と苛立ってしまう。

原作を読んだ時は「ふ~ん」な感想で終わってしまったし、映画も同じようになりかけたのだが、驚くことに終盤で印象が変貌した。探偵役の重岡君による真相披露パートに入ってからの見せ方が巧い。回想を多めに挟んだ伏線回収は理解度と納得感を格段に高めてくれる。三重構造の意味自体は小説でも理解していたけれど、その面白さは得られずにいたから、それだけでも映画を観た甲斐があった。何をどうやっても彼らを好きになることはできないが、この作品をちょっとだけ好きになれて嬉しい。
みや

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