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The Super 8 Years(英題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

The Super 8 Years(英題)(2022年製作の映画)
3.0
[スーパー8で撮られた家族と世界について] 60点

今年のノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノーが、実は初監督作品を今年撮っていた、ということで。共同監督はアニーの息子ダヴィドが務めている。アニーとその夫フィリップがカメラと上映機器一式を買ったのは、アヌシーに引っ越してきて7年目の1972年のことだった。共に30代前半で、アニーは高校教師、フィリップは市役所の役人として働いており、エリックとダヴィドという二人の息子がいた。本作品はフィリップが撮影した家族の映像を時系列順に繋ぎ、ミクロな視点からマクロを捉えていく試みであり、現在のアニー自身が映像と撮られた時代を振り返るコメンタリーが付属するという構成になっている。子供たちの視野を広げるため、アジェンデ時代のチリやスペインのリゾート、アルバニアのビーチなど様々な旅行をしており、今では失われてしまったであろう時代の欠片としての記録を背景に、アニー・エルノーの言葉が優雅に流れていく。本作品の企画は子供に祖父母のことを知ってほしかったというアニーの次男ダヴィドの想いから始まったらしいが、彼の存在感は限りなく薄い。そして、アニーが"編集に介入しなかった"と述べ、ダヴィドが"母の原稿は編集完了前に出来上がっていた"と述べている通り、完全に文字と映像が分離してしまっている感は否めない。何箇所か映像を撮ることについて話していた部分もあったが、基本的には本にしたほうが良いのではという感じで、言葉も文学的なのであまり刺さらず(というか一文が長すぎて字幕が流れていった)。英語字幕はエルノー作品の翻訳者アリソン・ストレイヤーが担当しているらしく、散文的なスタイルをそのまま翻訳している。
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