symax

ぼくは君たちを憎まないことにしたのsymaxのレビュー・感想・評価

3.7
…金曜の夜、君たちはぼくにとってかけがえのない人の命を奪った。彼女はぼくの最愛の妻であり、息子の母親だった…

"だが、ぼくは君たちを憎まないことにした。"

2015年11月13日…

その日、最愛の妻を失った…

パリを襲ったテロリストの凶弾に倒れたのだ…

それでも人生は続く…幼い息子の為にも"今まで通りの生活を続けなければならない…ようやく対面する事が出来た妻の姿を見たアントワーヌは、犯人達への手紙を書き始める…

テロにより突然妻を失った一人の男が、憎しみを憎しみで返さない境地に至るまでの道程を描いた作品…いや、そんな生優しいモノではない…

悲しみ、怒り、苦しみ、喜び…全ての感情がごちゃ混ぜの中、自分が壊れていく感覚…

アントワーヌが書いた犯人達への手紙は、憎しみは憎しみで返さないとありながらも、強い憤りと怒りは、その行間に痛いほど感じます。

そこに、アントワーヌの息子メルヴィルを演じた子役ちゃんの天才的な演技がまた、涙を誘うのです…

物語の最後に手紙が来るのかと思っていたら、早い段階で描かれ、瞬く間に世界中に広がり、アントワーヌが神聖な存在とも言える立場となるのですが、実際はそう簡単に区切りがつけられるはずはなく、事件発生から2週間のアントワーヌの記録は、怒りと恐怖を感じた直後に喜びと癒しもあり、感情の起伏が寄せては返す波のように襲い観ているこちらも胸が切り裂かれる想いになってしまいます。

今の世界情勢を考えると、憎しみのスパイラルからは抜け出せないやるせなさを感じるのでした…
symax

symax