Ucako

ぼくは君たちを憎まないことにしたのUcakoのネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます

この映画は正直、最後まで何の解決もできていない。起承転結はない。主人公の悲しみもエンドロールを迎えても少しも癒えていない。
しかし死に向き合うとはつまりそういうことなんだと思う。特に最愛の妻の死において、一生傷が癒えることはないと思う。

前向きな気持ちで笑顔で過ごすことができた日の夜に自死を試み、我に帰り、メディアの前で強がったと思えばふいに思い出が蘇ってきて悲しみ、息子に当たってしまう自分に落ち込み、それでも自分の書いた文章に励まされている人もいて、その人たちに今度は自分が励まされたり。

あの時自分が送ったテロリストへの手紙が自分を励ますと同時に、メディアに擦られることで忘れたくても忘れられない、考えたくないのに考えさせられる、テロリストを憎みたいないのに憎みたくなる、、。

主人公の感情の波を、余計な言葉の説明なしに上手く描いた作品だと思いました。こういう映画の作り方が個人的に大大大好きです。

最後のシーン、自分のものと息子のものだけがぶら下がった洗濯物を見て涙が出るのも、息子と2人の動画を見て涙が出るのも、木漏れ日にを見て涙が出るのも、仕方ない、そりゃあそうだよ。もう何を見たって涙が止まらない。心の中で一緒にいるとはいえ、会える日はもう来ない。それでも元気に生きていかなきゃいけないんだよね。

私は常日頃から、大切なひとに先立たれてしまったら、といった妄想をよくする。何か最悪なことが起こった時のショックを最大限に軽減しようと対策をしているのではと思う。
この手の映画はそんな私にとって抜群に刺さる内容。サマーフィーリングあたりも同じような理由でバッチリ刺さってます。映像や表現も美しいしね。
どんなに辛い日も、どんなに幸せな日も、何も変わりなく人生は続くということをまざまざと見せつけられる。
Ucako

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