SJ

ぼくは君たちを憎まないことにしたのSJのレビュー・感想・評価

3.8
『僕が恨みを抱えたまま息子を育てたら息子は犯人たちと同じ人間になってしまう』

テロで突然妻を失った直後、アントワーヌが小さい息子と2人、前を向く為にFacebookに投稿した文章は『この先怒りや憎しみはぶり返すこともある、それに屈しないよう手紙を書いた』とアントワーヌ自身が記している通り、日を追うにつれ、怒りと喪失感に打ちのめされていく。

喪失感はあとからどんどん大きくなる。
息子の存在が喪失感を一時的になくさせる、この子と進まないといけないという責任感がそうさせる。
アントワーヌの姉や妻の家族が、あの投稿は早すぎたんじゃないか…と話すシーンがあるが、全てを背負った当人にしかわからない感情があって、自分に誓いをたてることでどうにか自分を保てることをよく表していて涙が止まらなかった。

喪失からの再生の物語が【雨の日は会えない、晴れた日は君を想う】だったとしたら、この作品は喪失と怒りの中それでも否応なく進んでいく日常をより現実的に描いている。
SJ

SJ