Maoryu002

ぼくは君たちを憎まないことにしたのMaoryu002のレビュー・感想・評価

3.7
2015年11月13日、パリに住むアントワーヌ(ピエール・ドゥラドンシャン)はテロリストの無差別攻撃によって妻を失い、幼い息子と2人になってしまう。アントワーヌはSNSでテロリストに向け「君たちを憎まない」と発信し話題となるが、そこから彼は感情の整理と息子との困難な生活に直面する。

妻の遺体と対面したアントワーヌは、“君たちを憎まない、君たちの憎しみに怒りで応えたら、同じ無知に屈することになる” って投稿するけれど、怒らず恨まずにいられるわけがない。
これは人間として、親として、“こうありたい” からスタートして、苦しみながら再生に向かう物語だ。

彼は自分の言葉が注目されてしまったことで、怒って悲しんで妻の死を受け入れる作業が出来なかったんじゃないだろうか。
そこからの感情の変化が丁寧に描かれ、終盤、親子2人のビーチリゾートは笑いと涙が入り混じる姿がリアルで、無理に感情を殺さずに悲しむことを受け入れたように見えた。

そしてやはり、子供がいてこそ。“子供には人を憎んで生きて欲しくない” という想いには大いに共感したし、もしかしたら彼の唯一の本音だったのかもしれない。

それにしても、メルヴィルを演じた子役、凄くない?ママが恋しくて泣き、パパと楽しんで笑う。あの演技を引き出した監督を褒めるべきなのかな。
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