レインウォッチャー

キラー・ナマケモノのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

キラー・ナマケモノ(2023年製作の映画)
2.5
『キラー』…『ナマケモノ』。
嗚呼、なんて落ち着く響きなのでしょうか。

『哀れなるものたち』に『Past Lives』、『ボーはおそれている』…映画には印象的で謎めいた響きのタイトルが多くあり、内容を観て初めてナルホドと深く得心することもあるけれど、時にはこんなシンプル脳死タイトル(※1)に癒しを覚えてみたりもする。

だって、そっかーナマケモノがキラーしてくるんだあ、と思っていたら、ちゃんとナマケモノがキラーしてくるのだから。マクドのフライドポテト、日清のココナッツサブレのように《Just Is それ》の安心感が、GWの人ゴミに疲れた五臓六腑七代八つ墓九尾に染み渡る。

しかしそれはそれとして残念と言わざるを得ないのが、「ナマケモノである意味」がほとんどない点である。
今作の、あるJDが学園内でのステータスを得るためにどこぞの密猟者ん家からパクってきたナマケモノ、ことアルファちゃんは、かなり八面六臂の活躍を見せる。ていうか、器用すぎるのである。なにせ車も運転するし自撮りもする。

劇中にも「チャッキーかよ!」みたいな台詞があるのだけれど、逆に言えばナマケモノらしさを活かしたアクションがほとんど見られないのだ。これなら、キラー・ボルネオテングザルでもキラー・プエルトリコヒメエメラルドハチドリでも変わらないんじゃあねーだろうか。

せっかくナマケモノであるなら、

・首を270度回せる
・体にコケと蛾を飼ってる
・省エネすぎて変温動物

などなど、大喜利しがいのありそうな特技(特技?)をたくさん持ってるのに、ただのしぶとい(※2)殺人パペットとの肉弾戦になってしまってるのは単純に勿体無いと思った。なんだろう、肝心のアイデア出しまでナマケてしまったのだろうか。(うまい)(うますぎて草)(ナマケモノがいるのは森)

あと疑問なのは、なぜアルファちゃんをフタユビナマケモノではなくミユビナマケモノにしたのか、である。
フタユビナマケモノとミユビナマケモノはその名の通り指(爪)の数が違うわけだけれど性格的な特徴としてミユビナマケモノよりもフタユビナマケモノのほうが凶暴であるとされているのであるからして今作のようにキラーとして暴れ回るのであればミユビナマケモノよりもフタユビナマケモノのほうが適していると考えられミユビナマケモノではなくフタユビナマケモノを採用すべきだったのではないかと思うのだけれど他に考えられる仮説としては敢えてフタユビナマケモノではなくミユビナマケモノを採用することによりギャップを狙ったのかもしれず実際のところはフタユビナマケモノとミユビナマケモノに聞いてみなければわからないよね。

…ハイ、そろそろ頭痛がしてきたでしょうか。
であれば、今晩はしっかりナマケモノの悪夢が見られると思います。おめでとう、おやすみなさい。

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EDはちゃっかりオリジナル曲。かの名作『ゾンビーバー』を思い出してみたりする、パペットの雑カワ感含め。

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※1:原題のほうは『Slotherhouse』。これは、Slaughter=虐殺とSlother=ナマケモノをかけたダジャレになっているわけだ。
劇中でもこれを回収する台詞があるのだけれど、日本語で伝えるのはやはり難しかったようで、「生獣の館だ!」とか苦し紛れ過ぎて意味不明な訳になってた。(健闘は讃えたい。)

※2:ジジイの残尿くらいしぶとい。終盤は明らかに無闇に引っ張りすぎで、あと10分は早く終われてたと思う。