ぽんきち

52ヘルツのクジラたちのぽんきちのレビュー・感想・評価

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
5.0
小説が映像化される時、小説そのものがそのまんま、始まりから終わりまで全てもらさず表現(映像化)されれば、それはそれで素晴らしいかもしれないけれど、それはもう時間枠におさまらないほどの超大作になってしまう訳で、、
どうしたって、それぞれのエピソードの取捨選択が必要になってくると思う。その選択はきっと、作り手の想いでもあって、その原作を映像化した時に伝えたい、『どうしても』の何かを紡いでいった結果が、映画という作品になるような気がする。
そういう意味で、この映画『52ヘルツのクジラたち』は圧巻だった。
原作が大好きな、ただの1ファンの感想として受け止めてもらえればですが、はじまりのシーンからの全てが、まるで原作の世界が、目の前のスクリーンに広がっているかのような感動と感謝の気持ちでいっぱいになる。
小説を読んで、大好きになった登場人物たちが、今、目の前のスクリーンの中で動いて、喋っていることへの感動で、先ず、胸がいっぱいになった。
最初から最後まで、作り手の皆さんの、原作の世界観へのリスペクトが感じられるからこその、この再現力であり、キャストの皆さんは、その役を演じている訳ではなく、まさに生きている、そのものだった。
特に、杉咲花さんと志尊淳さん。お二人は本当に素晴らしすぎた。。

志尊さんは、この役を受けるに当たって、自分が本当に応えられるのかと、とても考えられたと仰っていた通り、私も本作の映画化の情報を知った時、真っ先に、志尊さんの演じられた役は、一体誰が…と、正直不安になったほどだ。それだけ、物語の肝であり、大事な大事な役所だったからで、

でも、そんな不安はもう本当に、見事の上をいく素晴らしさで払拭された。その立ち姿だけで、アンさんの心が伝わってくる。。本当に心が動かされた。

今の時代、少しの時間ができれば、ついついスマホを開き、その中の、自分が選んだ小さな世界だけに没頭してしまいがちになる…意識の有無に関わらず、自分の知りたい情報だけを選んで、自分の聴きたい声や音だけを聴きがちになってしまうけれど、52ヘルツのクジラの声を、たとえ、聴きとることが出来なかったとしても、聴きとろうとする、心のヒダのようなものを持っていたいと、素直に思えました。
結末に、どうしても少しの寂しさは残るけれど…観終わった後の多幸感に浸れる、素敵な作品なので、老若男女問わず、色んな立場の人に観てほしいな。
ぽんきち

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