そんなもんかどんなもんか

52ヘルツのクジラたちのそんなもんかどんなもんかのレビュー・感想・評価

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
4.2
試写会にて。啜り泣く声が最後まで聞こえるような、重くて苦しくてしんどくて内臓を抉られるような作品。誰にも届かない心の叫びを覗くからこそ鑑賞してる側が感情移入してしまえばしまうほどに苦しくなる。
俳優陣の演技を見るためだけに見てもいいぐらい良かった。

人生を終わらせてしまいたいほどの苦しい時にこれをみると、共鳴して尚更苦しくなる人もいれば、逆に救いを感がる人もいるのかもしれない。人によりけり。

フィクションだけれど、主人公きなこの人生ハードすぎる。自分だったらもう生きていけないかもしれない。
悪役が徹底して悪役で、全ての元凶ですね。
アンさんの最後の決断が心をグッと締め付ける。苦しすぎて悲しすぎる。アンさんがこうなったのは専務お前のせいだぞと責めたくなったけど、確実にトリガーの一つではあったけど、でもきっとアンさんの中で雫のように負の感情が溜まっていって、そして溢れてしまったのだと思う。
現代社会の偏見の目、冷たい心無い言葉、家族から理解されない苦しみ。全てのピースが何年も何年も積もり積もってしまっただけなんだと思う。
アンさんのお母さんの、「男でも女でもなんでもいいから…(ネタバレ防ぐため以下略」という言葉が全てなのかもしれない。それをもっと早く伝えられていたら、何か変わっていたのかも。

俳優陣の演技が素晴らしい。杉咲花ちゃんの嗚咽の演技が個人的に好き。泣きながら話す時ってあの喋り方になるんだよなあ。うまい。泣くシーンが多かったけど、決してどれも同じではなくシーンに応じて演じ分けられていて…。
そして志尊淳くん。顎髭の指摘があったけど、あれが大切なんだよ。あえて生やしているんだよ。きっとそう。顎髭にばかり目を向けず、その繊細な演技に目を向けてください。あるシーンの演技、本当に胸が張り裂けそうになった。絶対に志尊淳くんのそのシーンだけは瞬きせずに見て欲しい。どこのシーンなのかは見たらわかる。

幅広い世代に見て欲しい。そして自分の考え方とか言葉一つの選び方とか、目の前の一人との接し方一つでも、何か一つ見直すものが見つけられたらいいと思う。