hirobey

52ヘルツのクジラたちのhirobeyのレビュー・感想・評価

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
4.0
「市子」の演技が記憶に新しい杉咲花が、本作でも訳ありな女性を熱演した。こちらも彼女の代表作になりそう。

52ヘルツのクジラとは、個体は特定されていないものの実際に存在が確認されているクジラ。他のクジラには聞こえない高い周波数で鳴くことから、世界で一番孤独なクジラと言われており、群れずに単体で回遊しているらしい。

DVにより声を失った少年を救おうとするキコは、かつて自らもDVを受けていた過去をもつ。彼女を救ってくれたのは、トランスジェンダーの安吾だったが…。

本作タイトルは"たち"と複数形になっているとおり、人知れずSOSを発信している複数の登場人物たちが交差する。

他人が子供を預かり育てることは容易ではないことは、「キリエのうた」でも少し描かれていた。善意だけでは解決できない問題。本作でも「市子」でも杉咲花が演じたヤングケアラーも今日の社会問題の一つ。

顎髭を生やした志尊淳。トランスジェンダー男性の雰囲気をよく出していて、彼にとっても代表作になりそう。静かに見守る深い眼差しがとても印象的だった。

真飛聖と西野七瀬。どちらもDVする側の病んだ母を好演。観ていて切なく怒りにも似た感情が湧いてくる。宮沢氷魚の演じた専務も。

倍賞美津子、余貴美子というベテランが、脇を固めているところも良かった。

ただ、気になったのは、死にかけた人を居酒屋に連れて行くところ。流石に無いだろう。また、志尊くんの肩幅と掌の大きさ。これは仕方ないか。

それにしても、ここ数年、lgbtq、DVなどを扱う作品がとても多くなった気がする。そういう作品の評価が総じて高く、結果的にそういう作品を観ることが増えた。将来、振り返ってあの時代らしい作品だね、なんてことになるのだろうか?
hirobey

hirobey