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52ヘルツのクジラたちのmのレビュー・感想・評価

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
4.0
相手の声を聞こうとする努力と、"あなたのことを本当に大切に思っている"と言葉にして訴えかける姿に、どうか届いてほしいと何度も泣いてしまった。

アンさんからキナコへ。キナコからアンさんへ。
キナコから愛へ。美晴からキナコへ。

"自分が自分のために自分らしく生きること"を否定され、誤魔化しきれないほどぼろぼろにされた心に、まっすぐな愛情は傷口にしみるみたいに痛い。でもそういう他者の思いが、人の人生を救うのだと私はよく知っている。

児童虐待、ヤングケアラー、トランスジェンダー差別。
映画の中で写されたこれらの問題は根本的には何も解決していない。
だけど、この作品の中で、まずはそこにある問題を見つめることができた。それが問題であること、今も傷ついている人がいるということに気づくことができる。
作り手がこれらをフィクションとして消費するだけに終わらせず、現実に存在する問題として真摯に丁寧に向き合おうとしていることが嬉しかった。


最後に、映画鑑賞後に読んだこちらの記事がすばらしかったので、メモ。

杉咲花×ミヤタ廉×浅田智穂による『52ヘルツのクジラたち』鼎談。トランスジェンダーの表象と、日本映画界の課題 | CINRA
https://www.cinra.net/article/202403-52hz_iktay

杉咲花さんや志尊淳さんのように今の社会が抱える問題や差別について考えている役者は他にもいるのだと思う。
だけど、このおふたりのように、時間をかけて考えられる環境で誠実さを持って作品や役を生み出したり、思いを言葉にして自ら発信したりできる人は少ないように感じる。
お芝居がすばらしいのはもちろんのこと、同世代として彼らのそういった面をとても尊敬しているし、まずは杉咲花さんや志尊淳さんが携わる映画からもっと信じてみたいと思った。
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