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レースを編む女のfleurのレビュー・感想・評価

レースを編む女(1977年製作の映画)
4.7
物静かな美容師見習いの極々ふつうな女の子、ベアトリス/ポム。同じ美容室で働くマリレーヌはポムのことを可愛がっていて、性格は違うけどふたりは仲良し。失恋したマリレーヌとともに向かったバカンス先で、ポムにも出会いが訪れる。パリで大学に通っているという誠実そうな青年のフランソワ。互いに控えめなふたりは少しずつ親しくなっていき、似合いのカップルになっていた、はずだった。けれど、少しずつ生じていく歪み。多くを語らず、静かにじっと耐えるように佇むポム。その内に秘めた想いが言葉ではない形で表れていく。教養があること/大学で学ぶことが優れているのか、献身的な姿勢や家事をすることは蔑ろにされても良いものなのか(ポムは好きでやっているように思えたからこそ)。「映画は沈黙のアート」というユペールの言葉の通り、静かなる時間は他にはない映画にしか表現できないものだ、と教えてくれる作品。やつれた姿になったポムは見舞いに来たフランソワに「ギリシャ」に行っていたの、と話す。彼女の「ギリシャ」は同じ白い壁でも精神病院の休憩室の隅。そこで淡々とレースを編む。その視線がこちらに向いたとき、声よりも言葉よりも強い想いを直に受けて震えた。
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