CINEMAと暮らす

また来週のCINEMAと暮らすのネタバレレビュー・内容・結末

また来週(2022年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

現実と虚構が入り混じる作品は多いが、現実と朝ドラが入り混じる作品は初めて見た。自分はほとんど朝ドラを見たことがないが、その雰囲気は何故かわかる。天真爛漫な主人公。持ち前の明るさで周囲を巻き込んでいく。そして、夢を叶える。それが朝ドラだと知らないながらに思っている。

明咲子はそんな朝ドラの世界に憧れている。しかし、現実は厳しく、朝ドラのようにうまくはいかない。朝ドラを見る=日本国民というそれを知って、現実を生きるようになった明咲子を見て、なぜか心苦しくなってしまった。

なぜ心苦しくなったのか。明咲子は「朝ドラには平凡な日常を波乱万丈な一代記に変える力がある。」と語っている。朝ドラに彩られた明咲子の日常は作りものだったのだろうか。明咲子には明咲子の現実があっただけのように私は思う。その現実がたまたま他人の現実と合致しなかったのだ。しかし、保健室の先生や友人の夕華は問答無用で明咲子を現実に戻そうとする。

ここで屈しては朝ドラの主人公ではなくなってしまう。朝ドラの主人公は自分の世界に周囲を巻き込むからこそ主人公なのだ。おそらく作り手もそこまで承知したうえで、希望的なラストを演出している。明咲子は明咲子の現実を生きて構わないのだ。