HK

サンダウナーズのHKのレビュー・感想・評価

サンダウナーズ(1960年製作の映画)
3.6
この映画、名匠フレッド・ジンネマン監督のアカデミー賞主要5部門にノミネートされた作品ですが、U-NEXTでみつけるまで存在すら知りませんでした。
ジンネマンの『尼僧物語』と『日曜日には鼠を殺せ』の間に撮られた作品で、一見、西部劇風ですが、オーストラリア開拓期のアイルランド移民の家族を描いた珍しい作品。

主人公一家(夫婦と一人息子)は羊の移送などをしながら馬車での移動生活を送っており、その道中や中継地でのさまざまな出来事が描かれます。
とくに大事件も無く、小さな出来事の積み重ねながら、オーストラリア開拓期の一家の生活が巨匠の手によって丁寧に描かれており、とても心地の良い作品になっています。

ジンネマンはアリゾナやテキサスでの低予算撮影案を拒否して現地ロケを決行。
オーストラリアの平原を牛ではなく羊の群れが大移動、目の前をカンガルーが横切り、木にはコアラが。

カウボーイが牛の群れを追うシーンは西部劇で何度も見てますが、これが大量の羊の群れとなるとまた新鮮。
羊たちが次々にピョンピョンと跳ねる様子は、まるで『トムとジェリー』やなんかで眠れなくて羊を数えるときに思い浮かべる感じ。
群れから飛び出した羊を追いたてて戻す利口なワンコや、羊毛刈りのシーンで大人しく抱っこされて毛を刈られている羊たちが見ていて微笑ましい。

キャストもとてもよく、所帯じみた妻役でも余裕でキレイなデボラ・カー。
夫役のロバート・ミッチャムも途中で雇われるピーター・ユスチノフもイイ感じ。
一人息子役のマイケル・アンダーソン・ジュニア(当時17歳)はこの5年後には『エルダー兄弟』の四男の役も爽やかに演じてます。

音楽は大御所ディミトリ・ティオムキン。
タイトル(=原題)の“The Sundowners”には“放浪者”という意味があるようですが、この馴染みのない言葉のカタカナタイトルは日本では何も伝わらなくてもったいない気がします。
HK

HK