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サンダウナーズのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

サンダウナーズ(1960年製作の映画)
3.8
オーストラリアで羊の群れを移動する仕事に就いている夫(ロバート・ミッチャム)とその妻(デボラ・カー)と息子の悲喜こもごも。大きな盛り上がりはないものの、家族それぞれの思いをじっくり描いていて、人情噺に引き込まれた。オーストラリア舞台なのに、江戸っ子気質を感じてしまった。

壮大な景色はまるで西部劇のようで、男たちもカウボーイみたいなのに、荒くれさは少ない。移動生活することで、定住できない「放浪(オーストラリアの言葉でサンダウナー)」がサガとなり、家庭を築くことが難しくなる。

主人公たちは家族で移動しているため、定住して教育を受けさせたい妻と息子の思いと、夫の間に溝が生まれていた。

ロバート・ミッチャムは「夜の狩人」の印象が強烈にあり、いつ悪い人に豹変するかドキドキしたけれど、あのスリーピングアイのまま、気だるく、賭け事ですっからかんになってしまう飲んべえな職人だった。宵越しの金は持たねえ、の江戸っ子ぽくて親近感湧いた。

美しいデボラ・カーはたくましく、強いお母ちゃんで、これまたチャキチャキの江戸っ子に見えてしまう。

息子は気になった女の子のいる町に定住するのを夢見ているが、お金が貯まると父親が飲んだくれて賭け事ですってしまう…これまた江戸っ子の噺っぽい。

羊にまつわる仕事はさまざまあり、羊の毛刈りの際に、「タール・ボーイ」なる仕事があった。調べたら、毛刈りの際に羊を傷つけたら、タールを塗って止血する仕事だそう。

息子が父親の賭け事で得た競争馬に乗ってレースに出るシーンはダイナミックで気持ちよかった。その馬が非常に美しい。馬の種類は詳しくないのだけれど、競争馬ほど脚は細くなく、腿がたくましい。全体に均整のとれた強い馬だった。斑が入り白っぽい。見たことのない馬の種類に見えた。

オーストラリアの壮大な景色と、人恋しい人々の人情を味わえて、気持ちいい映画だった。

鑑賞者が少なく20番目のレビュー。Unextで観られますよ。日本では非公開、アメリカではアカデミー賞にノミネートされた作品です。
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