Jun潤

隣人X 疑惑の彼女のJun潤のレビュー・感想・評価

隣人X 疑惑の彼女(2023年製作の映画)
3.6
2023.12.16

上野樹里×林遣都
久しぶりのメンツですがどちらも僕の青春時代を飾った方々のうちの2人。
林遣都の方は『VIVANT』で相変わらずの演技力を見せてくれたので期待して鑑賞です。

惑星Xからの避難民をアメリカが受け入れた。
しかし日本は移民対策も進まず、国民の理解も深まらず、日本人の間では人類と同じ姿をして同じ言語を話しているはずの星人Xに対して非論理的な疑惑が広がっていた。
雑誌記者の笹憲太郎は、星人Xについて懐疑的で、特集チームに組み込んでもらいX疑惑がある柏木良子とリン・イレンのパパラッチとなる。
笹は編集部の指示で強引に良子と接触し、打算的に彼女と交流を重ね、急速に距離を縮めて付き合うところまで漕ぎ着ける。
良子がXであるかどうかで笹の感情が揺れる中、夢に出てきたという曖昧な理由から、彼女の父親がXであるという危うい確信に行き着く。
一方、台湾からの留学生で、生活費を稼ぐためのバイトに追われ、語学学習が進まないレンは、バイト仲間の拓真に惹かれていくが、彼が抱く音楽の夢や彼の周囲の人物とは感情と言葉がすれ違う。
誰も自分自身のことを証明できないという不条理の中、マスコミがもたらす混乱によって、笹とレンの心は次第に大切な人に向けたものへと変わっていく。

なるほどなるほど、こう来ましたか。
各登場人物たちの事情として、笹は憧れた夢を叶えるために手段を選べないようなダメ男気質、良子は父との不和を解消できず、親戚からは結婚という“普通”を押し付けられる。
レンも拓真も夢を叶えることにこだわりつつ互いを想う感情やそれぞれの周囲の人たちとの関わりの間で右往左往。
これらの事情自体は、一つの作品として成立させるにはいささか不十分な感じですが、惑星Xからの移住者Xという SF要素でもって、オカルティックなサスペンスとしての雰囲気を放っていました。
個人的にはその雰囲気が続くかどうかを気にしていましたが、意外とというかXの正体も生態も何もわかっていない、あるいはそもそもそんなものは無いのではぐらいまで正体を明らかにしていないこともあって、終始その雰囲気を保てていたように思います。

Xのことを何も知らない、情報源が無数に存在するが故の不安やストレスを抱えたまま、その感情をぶつけたいと振り上げた拳の行き先も分からず、真偽に関わらずそれっぽい対象を見つけた途端みんなで拳をぶつけにいく。
元々あった風潮のように思いますが、コロナ禍でより顕著になり、作中でも明言されましたし、営利企業でしかないのに変に社会的使命を帯びた気になったマスコミが暴走し、世間もそれに踊らされる、それも踊らされてないと勘違いしたままで。
本当は良子のように、色眼鏡を通さずに相手の心を見つめて交流すれば、その人がどんな人か、自分と関わるべきかどうかも、少しは分かるし正確さも増すのではないかというところですが、それがなかなか難しい。
異星間、異国間、異性間に限らず、相手のことを理解できない、理解した気になっている、理解しようとしないことが一番対話の可能性を無くしているのではないかと、色んな方向から指摘してくるような作品。
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