あなぐらむ

学生情婦 処女の味のあなぐらむのレビュー・感想・評価

学生情婦 処女の味(1976年製作の映画)
4.2
シネロマン池袋で「学生情婦 処女の味」1976年小原宏裕。一年少しぶりのシネロマンさん。こういう変化球をこそ低めいっぱいに投げてくれるのが嬉しい映画館さんだ。

これは最高の八代夏子映画。能動的で奔放な夏子が画面いっぱい躍動する、小悪魔映画の極点。
小原監督らしいきっちり女優を綺麗に撮りつつ過不足ない絡みを入れ込む仕事ぶりの中に、いど・あきお脚本が遺していくのは低温の不穏さと濃密な死の匂い。「セイガクマブ」とふられたルビが作品がダーティな世界にある事を匂わせる。

戦争の残滓だった浮浪児ががヤクザになり、鉄砲玉を担わされ高度経済成長の象徴である高層マンションの前でぼろ切れの様に死ぬ。その時間で物語は凍結される。心中で始まる物語は、「死に損ねた者たち」を結びつけ、束の間その事実のみで惹き合うものの、やはり別れは必定。それだけに童女の無垢さとおんなの身体を持ちながら幼児性を炸裂させる八代夏子のたどたどしい芝居が活きる。
重しとなるヤクザの女、宮下順子の抑えていながらはみ出す妖気、怖しさが、性と死の玩具としての映画を感じさせる。

難しい話は置いて、セーラー服から始まり、シーン毎に違う鮮やかな衣装を着こなす夏子に目が釘付け。そして日焼けボディとたゆたゆ自然乳。たまんないです。クライマックスの性交シーンが、大きな窓から工場街(これセットだよね?)景色が見えるベッドルームなのは、同じファンキーさんの「バックが大好き」を思わせる。

三番手の牧れいかは絵沢萠子さん風のアバズレ臭が良いアクセント。太腿に入れた刺青のパンチが素晴らしい。
お話を説明してくれる(役として)清水国雄さんのとっぽいチンピラぶりも楽しい。唐獅子牡丹な戦後極道を遠藤征慈が快演。たっぱも高くて八代夏子の相手としては申し分なし。
美術の菊川芳江は田中登「屋根裏の散歩者」も担当。撮影は「皮ジャン反抗族」の山崎敏郎。助監督に飛河三義。