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コンクリート・ユートピアのMKのレビュー・感想・評価

コンクリート・ユートピア(2021年製作の映画)
3.6
パニック系社会派ヒューマン・ラブストーリー…何だそれ?

盛りだくさんなのか自分が捉えきれなかっただけなのか、なんとも感想が散らかる映画だった。

日本の住宅公団のような戦後の高度経済成長期のマンション乱立の映像から、インセプションさながらのもはや神の裁きとでも言わんばかりの地殻変動?による都市の崩壊…ただしインフラの崩壊による火災や津波、人的被害であるパニックやデマ、暴動などによる混乱はない世界…その中でなぜか一棟だけ残存した高層アパートが舞台。

スマホやネットは普及してそうだけど、家族や親戚の安否を気遣うも連絡の取れない通信パニックや、地域外の親戚を頼ることはなさそう。

外部からの情報がまったくないなか、そこそこ日数が立っても汚水槽の破綻や高置水槽の枯渇や犯罪などは全く問題にならない、たまたま家族がアパートにいてみんな無事…というなんとも不思議な世界観。

というわけで災害やその後日談としては自分的には破綻しまくっているので、物語を綴るためにこのシチュエーションが必要なんだろうなと割り切って途中からは観ることにした。

唯一健全なアパートに暮らす住民、パニックによるパラダイム・シフトで急遽持ち得る者となったアパートの住民たちと、そんなアパートにすがるように集まってくる持たざる者となった近隣住民たち。

最初こそ互助な雰囲気もあったけれど、時間の経過とともに他者を排除し、自警組織をつくるアパートの住人たち。ゲーテッドコミュニティと化したアパートでは例外なくヒエラルキーが形成され異質な存在は次第に排除されていく…

そんなアパートは、限られた富を分け合うのではなく、奪い合うかのような資本主義社会の縮図のようにも見えるし、誰かの犠牲なしに存続し得ないこと…奪い合い、殺し合う現実から目を背けることのできない競争原理、その中にあっても人間性を失うことなく、人間的であろうとする人々や不毛な死など極限状態での人間心理などなど様々な人間模様を映し出していく。

そしてそれらを描き出す人々も作品の言葉を借りれば「普通の人たち」でしかない。

おかれた状況、求めるもの、信じてやまないもの、守るべき大切なもの…誰もが譲れないもののために自己中心的になっていく様は恐ろしくて滑稽にすら見えてしまうけど、それも全て普通の人たちがしていること、世の中に溢れたできごとなのかもしれないと思ってしまった。。

とまぁ考えさせられること満載の物語だったけど、トータルでは満足できた。
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