HAYATO

コンクリート・ユートピアのHAYATOのレビュー・感想・評価

コンクリート・ユートピア(2021年製作の映画)
3.9
2024年13本目
第96回アカデミー賞国際長編映画賞の韓国代表作品
イ・ビョンホン、『パク・ソジュン、パク・ボヨンらが出演
未曾有の大災害に襲われ、一瞬にして廃墟と化したソウルで、唯一崩落しなかったマンションの住民たちは、主導者を立て、居住者以外を追放し、住民のためのルールを作って“ユートピア”を築き上げようとする。
本作のディザスター描写は、ローランド・エメリッヒの作品を彷彿とさせるハリウッド顔負けのクオリティで、大規模な地盤隆起が広範囲に渡って起こるというなかなか現実離れした設定に説得力を持たせている。
オープニングの映像により、韓国で「家(マンション)」を持つ大変さを知り、そうした住宅事情を踏まえると、唯一崩落を免れたマンションの住民が、自分たちのマンションに紛れ込んできた人々を徹底的に排除しようとする理由が伺える。
究極的な状況に置かれた住民たちが、どんどん人間性を失っていく様が恐ろしく、一度完成されてしまったシステムに批判的な目を向ける難しさを痛感。
実際に自分もこのような経験をしたらどうなってしまうんだろうと震えた。
最近やたらパニック映画に出演しているイ・ビョンホンは、冴えない男が権力を握ったことで次第に狂気を顕にしていく様を見事に表現していて、第44回青龍映画賞主演男優賞を受賞したのも納得の素晴らしさだった。
ラストでかすかな希望が見えたものの、基本的に救いのない展開が続いたので、年始から辛い出来事が続いた現実世界と重なって、今自分が何をすべきなのか考えさせられた。
分断が進む昨今の社会情勢を反映しつつも、キム・ヨンタクの素性を巡るミステリーやシニカルなユーモアといったエンタメ要素も多分に含んでいるところはさすが韓国映画って感じ!
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