さくぞー

コンクリート・ユートピアのさくぞーのネタバレレビュー・内容・結末

コンクリート・ユートピア(2021年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

相変わらず韓国映画の設定は惹かれる。どう落とすんだろうと心配になるが、とにかく聞いた人が面白そうと思える設定に果敢に挑戦するところが本当に尊敬する。
もっとエグいシーンあるかと思ったが、娯楽性と社会性のバランス良く見やすい映画に仕上がっていた。そのぶんストーリーの構成や代表以外のキャラクターなどもう一押しほしかった部分もある。

代表の過去を暴いたからとて…なのが良かった。普通の人たちでしたと否定も肯定もしないセリフで締めるのも◎。名前のあるキャラが少ない(設定されていてもほぼ名前で呼ばれない)のも、メインキャストもモブも関係ないという意図があるのかな。

あらすじでは仕方ないとは思うが、狂気を露わにしていくのはミンタクではなくアパートの住民全体だろう。ミンタクは支配的ではあったが、最後までアパート側として存在したのが面白い。
だって狂気の独裁者なら女を侍らせたり食料を裏で独り占めしたり自分が先頭に立って外に出たりしないでしょ。普通支配者が「お前たちを家族だと思ってた!」とか言ったら観客も白けた目で見るが、ミンタクに関してはガチで家族と思ってたと思う。

コメディ面でも代表が映画全体を引っ張る。最初の拡声器や白刃取り出来ず二発目食らうシーン好き。CMのくだりなど、痛烈に皮肉ったコメディシーンも面白かった。
こういうシーンが最初にあるからこそ、普通の人たちでしたという言葉が光る。キラキラしたエリートではなく行動で認められた謎のおじさんがトップに立つのは斬新。いつもはキラキラしたエリート役が多いイ・ビョンホンがそのオーラを消して圧巻の演技を披露した。
代表を全肯定はできないが、ステレオタイプな緊急時の支配者という型にはまらない人間らしい厚みのあるキャラクターだった。

代表を通じて家・家族というテーマも掘り下げられる。
真に頼れる家族がいない(本物の家ではない)からこそ、サバイバル下での住民代表という絶対やりたくない役割を本気で務められた反面、一つの綻びで一気に崩壊してしまう。上に立つ者の表裏を見せつけられた。

また、ラストシーンの映像のおかげで、タイトルが出て終わるという映画の"あるある"が非常に活きた演出になっていて素晴らしかった。普通に入って縦になるカメラワークえぐい。

映像:=====B
脚本:====C
編集:====C
俳優:======A
人物:=====B
音楽:====C
音響:=====B
【MVP】代表
さくぞー

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