未曾有の大災害に見舞われた韓国・ソウル。
唯一崩落を免れたマンションを巡り、極限状態での人間の本質を描いたディストピア・ムービー。
そう、これはディザスター映画というよりディストピア映画だと思います(とは言え、災害の描写が多く含まれるので注意)
私は終始
『極限状態における人間を観察するために神が行った壮大なる実験』
のような視点で観ていたような気がします。
そうでもしないと、この極限状態で「お前ならどうする?」という問いを突きつけられ続けて苦しくなってしまうから。
だけど、なるべく客観的に第三者的な視点で観ようとしても、ずるずると引きずり込まれるように何が正しいのか、何が善で何が悪なのか、そして自分ならどうするのか...を考えさせられる。それが韓国映画のすごいところであり、私が韓国映画を好きな理由なんだと思います。
大災害によりこれまでの価値観やヒエラルキーがリセットされ、持つ者と持たざる者、人と物の価値が逆転した極限状態に置かれた時、人は何を考え、どう行動するのかー
今回は「唯一崩落を免れたマンションの住人である」ということがヒエラルキーの頂点に立つ絶対条件になる。
だけど、その中でもまたヒエラルキーが出来上がってくるのが面白い。というか、当然のことなんだろうな...
そして、「環境が人を作る」ということもまた強く感じました。
“スタンフォード監獄実験”って聞いたことある人もいると思うけど、その実験のことも思い出した。
普通の人が特殊な肩書きや地位を与えられるとその役割に合わせて行動してしまう...というものだけど、まさに今回、救世主のように現れた #イビョンホン 演じるヨンタクがそうなんじゃないかと。
それだけではないとは思うけど、あの変化には本当に驚かされました。
置かれた立場によって何が正しいのか、何が間違いなのかが一瞬にしてひっくり返るし、そもそも答えなんてないのかもしれない。
ここに出てくる人達はみんな特別な人でも悪人でもなく、ごく普通の人たちで。
人間は本当に愚かで自分勝手で弱いものなのかも。だけど、人間は自分を犠牲にしてまで他人を、そして大切な人を守ろうとすることもできる。
...と綺麗に終わりたいところではあるけれど、その自己犠牲ですら事態を悪化させる一因にもなり得るというね。
もう考えたところで答えは出ない。それでも考えてしまうのが人間なんだけど。
とにかくビョンホン先輩の怪演が圧巻。パクソジュン のあの状況や雰囲気に流されてしまう弱さも良かったです。
129分があっという間だった。
今起きている出来事を考えると、内容的にやはりオススメしますとは言えないけれど、作品としては本当に見応えがありました。