Binchois

コンクリート・ユートピアのBinchoisのレビュー・感想・評価

コンクリート・ユートピア(2021年製作の映画)
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ウリ・アパトゥ以外全部壊滅。シビアな住宅事情をネタにした韓国映画はだいたい面白い。
アパート内では賃貸か持ち家かで、対外的にはアパートの立地条件によって、階級意識がナチュラルに形成される。あんな会話が本当に成り立つのであれば、現代韓国社会笑うに笑えない。
ってかイ様の隣人の女子高生、誰かと思ったら『はちどり』のウニちゃんかよ!5年間ですっかり大人っぽくなって驚いた。
さながら「政治学概論」といった構成。原初状態でボーッとしてると簡単に専制・独裁に流れることがわかる。
最初こそ投票による意思決定が導入されたものの、碁石を開票したときの、少数意見の切り捨てが可視化されるあの「気まずさ」たるや。
それなら誰でもいいからリーダーっぽい奴に全権委任した方が、角が立たず責任もとらなくていいから、圧倒的に楽なのだ。
普通の人たちが、ごく自然な流れで、どんどん残忍になっていく。脚本の想像力に恐れ入った。

世界が狂気に包まれるなかで、どのように立ち回ればいいのか。嫁の朴寶英ちゃん(かわいい)のように、怪訝な表情(かわいい)を保ち続けられるか。
結果的にどうにもならなくても、捨ててはいけない人間性みたいなのは確実にある。
ラストシーンは思い返す度に味わいが増す。文字通りに発想が90度転換させられる。それでも生きていけるのだ。
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