こーじ

コンクリート・ユートピアのこーじのレビュー・感想・評価

コンクリート・ユートピア(2021年製作の映画)
3.4
『家族』を守るために、
目を覆いたくなるほどの苛烈な行動を取っていく代表(イ・ビョンホン)。

そんなイ・ビョンホンが終盤で言う
「口だけ動かしてて楽ですね」的な言葉。
自分達では決断できず、
誰かを祭り上げて
あらゆる決断と責任を押し付け、
言いたい放題の大衆。

代表の決断の中、
迷妄する大衆のうねりに抗えず、
これまた家族のために自分を失って
同調していく、パクソジュン。

そんな中でも
自分の意志を失わずに
他者との共存を貫いていこうとする、
いくばくかの人々。

全部ひっくるめて、
ラストでパクボヨンが言う
「普通の人たち」なのだろうと思う。

ラストで理想郷のような
共存のコミュニティが見えるけど、
現代において、
これは『普通』ではないのかも。
綺麗事抜きに
衣食住の安全が満たされてるからこそ、
他者を受け入れるゆとりが生まれる。
では、その安全を、どうやって手に入れているのかがひっかかって、ラストの場面を素直に喜べなかった。
安心と希望は感じるラストではあったけど。

ここも、安全が満たされなくなったら、
皇居アパートみたいになるのではないか、
と思えてしまって。

人と人との安心できる関係。
家族内にしても、
隣人にしても、職場にしても、
国同士、移民の受け入れ、価値観の違い、
生活習慣、文化の違い…様々なこと。
どうやってそこを乗り越えて、
理想に近づいていけるか?
そんなことを、イ・ビョンホンの独白に感じてしまった映画でした。
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