シンタロー

知りすぎていた男のシンタローのレビュー・感想・評価

知りすぎていた男(1956年製作の映画)
3.6
アルフレッド・ヒッチコック監督×ジェームズ・スチュワート&ドリス・デイ主演。
アメリカ人医師のベン・マッケナは、妻で元ミュージカルスターのジョー、息子のハンクと、フランス領時のモロッコへ休暇旅行に来ていた。バスでルイ・ベルナールというフランス人と知り合い、夕食の約束をするがドタキャンされてしまう。夫婦で訪れたアラブ料理店でイギリス人のドレイトン夫婦と親しくなるが、そこで女連れのベルナールを見かけ、不信感を抱く。翌日、一家はドレイトン夫婦とマラケシュの市場を観光するが、そこへ背中を刺された瀕死の男が現れ、ベンに謎の言葉を残して息を引き取る。その男はアラブ人に変装したベルナールだった…。
もうすぐ祖母の誕生日でホームに面会に行くので、祖母の好きだった作品を鑑賞。好きな女優といえば倍賞千恵子と、本作のドリス・デイ。家にレコードもあります。ジェームズ・スチュワートもお気に入りだったので、何度も一緒に観ました。ヒッチコックの英国時代の作品「暗殺者の家」を自ら再映画化。ドル箱スターランキングの常連、アメリカで好感度抜群の2人を主演に迎えたことで、2時間サスペンス風だった原型の巻き込まれ型とは異なるユーモアを吹き込んでます。アラブレストランの慣れない席に長過ぎる脚が邪魔して四苦八苦するスチュワート、食事作法にも悪戦苦闘して笑えます。剥製工房での乱闘騒ぎや、教会で讃美歌を歌いながら、歌で会話するシーン等々、この2人ならではのコミカルな描写が楽しく、イイ感じのメリハリが効いてます。オープニングで暗示されるアルバートホールの場面が秀逸。コンサートの演奏が暗殺のカウントダウン。指揮者にバーナード・ハーマン自らが登場。シンバルが鳴るまで台詞は一切排除。ドリスのスクリーム。カッコよすぎです。そして"ケ・セラ・セラ"ね。ハンクの口笛が聞こえてくるシーンにはホロリとさせられます。この名曲を産み出したことが、作品の価値をさらに高めたと思います。
主演はヒッチコックのお気に入りジェームズ・スチュワート。いかにも好感が持てる常識人の悪夢に巻き込まれていく様が、なぜかピッタリはまる人です。これほどスーツとハットが似合う方もなかなかお目にかかれないと思います。芝居はいつも通りで普通。ヒロインはドリス・デイ。日本で人気だったのはオードリー・ヘプバーンやマリリン・モンローですが、本国で好感度と集客力が抜群だったのは彼女。日本では女優というより歌手としての認知度が高いのかな。そばかすと下膨れ顔がチャームポイント。ベット・ミドラーやレネー・ゼルウィガー、モリー・リングウォルド等々と同タイプの不美人だけど愛嬌があって、応援したくなる感じがアメリカでは受けたのかな。歌唱力は言わずもがなですが、ヒッチコックヒロインとしては異色の部類だと思います。
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