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オール・ダート・ロード・テイスト・オブ・ソルトのnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.6
淡々とした繋ぎと長回しは一見してバリー・ジェンキンスの『ムーンライト』を凌ぐと言っても大袈裟ではなく、ミシシッピに住む黒人女性マック(チャーリーン・マクルーア)の現在と過去とをシームレスに繋ぎながら、彼女の人生をモザイク状に見せて行く。映画的な起承転結があるわけではなく、モンタージュの快楽に満ちているわけでもない。然しながら今作が処女作となるレイブン・ジャクソンの視点は五感をフル活用し、少女の頃のマックから子供を身籠った現在のマックまで彼女の黒人としての美しさを導き出している。今作においてはシークエンスとシークエンスの繋ぎ目はほとんど意味を為さず、代わりに前景化するのは匂い立つような肌の質感と微かに触れた触角の刹那で、あとは土や川の生々しい匂いや虫の音色に彼女の生は支配される。マックの目が見つめるこの不可思議で自然豊かな世界では様々な生のさざめきが起こり、同時に残酷な死がある。それは冒頭の魚の死からも明らかだろう。監督のレイブン・ジャクソンには活劇的な才能は殆どなく、専ら静止画のような極めて静的な感覚と役者の生理とが映り込むのだが、エンターテイメントとしては未熟と言うかインスタレーションのようなとっつきにくさを感じた。
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