1960年代。米国、西部に位置するカリフォルニア州。
ホセ少年の家族は、メキシコからやってくる移民労働者で、ブドウの収穫を手伝っては次の町に向かう旅行生活をしている。
ホセは1972年にテレビで観たアポロ17号の月面着陸を切っ掛けに、宇宙飛行士になる夢を追いかけはじめる。
監督は、アレハンドラ・マルケス・アベーラ。
脚本は監督と、ベティナ・ジロイス。エルナン・ヒメネス。
2023年にAmazonプライムビデオで公開された伝記ドラマ映画です。
【主な登場人物】🛰️👨🏾🚀
[アデラ]自動車屋の娘。
[アンダーソン]搭乗員責任者。
[カルパナ・チャウラ]訓練責任者。
[フレデリック・スターコウ]飛行士。
[ミス・ヤング]先生。
🚗ヘルナンデス家。
[サルバドール]父。
[ジュリア]母。
[フリオ]息子。
[ベト]いとこ。
[ホセ]主人公。
[マリサ]従姪。
【概要から感想へ】🚀🌽
監督は、アレハンドラ・マルケス・アベーラ。
1982年生まれ。メキシコ出身の女性。
長編3本目で、どれも脚本も担当している。ドラマ、クライム、伝記なのでばらばら。
脚本のジロイスは、1961年生まれ。ドイツ出身の女性。
9本目のベテラン。伝記や実話。スポーツが専門。宇宙飛行士は体力勝負でもあるので、本作にぴったり合っている。
主人公と同年代なのも大きい。
脚本のヒメネスは、1980年生まれ。コスタリカ出身の男性。
今回のコメディ担当。
原作は、ホセ・モレノ・ヘルナンデスの自伝『Reaching for the Stars』
1962年生まれ。カリフォルニア州出身の男性。
本作の主人公である。
コツコツ型で、ネバーギブアップ。彼の堅実な生き方に合わせたように、演出も地味なものになっている。
🪐遠き宇宙への旅路。
日本語の副題そのまま。
幼少期からエンジニア時代で序盤を使って、中盤で子育てと、本格的にNASAを目指してギアを上げる前のおぜん立てがまー長い。
自伝をくせなく丁寧に映画化する意味合いもあるのだろう。
各地を転々としながら働く貧困層の子が、宇宙飛行士まで上り詰めるギャップを、最初から最後までクラシカルなスタイルで描いてある。
🥼学者タイプ。
主人公のホセが頭のいい草食系で、奥さんが肉食系のよくある夫婦。
まるでホームビデオで撮影されているかのように、何の変哲もない一般家庭の物語。
コメディ要素も後から少し付け足したように控えめ。
妻子持ちだとより楽しめそうな内容。職業の話はとくに出てこず、家庭を持つ大変さに重きが置かれている。
とは言え、作っているのは女性たちなので、妻の心理や訴えも上手にくみ取ってある。
その辺にいそうな中年のチャレンジであり、人気の高さから見ても、広く感情移入しやすいのだろう。
狭き門。
あらためてNASAに入る大変さを教えてくれる。
入ったらはいったで軍隊のような過酷さ。知力と体力の両方を必要とする、国を背負った責任重大な仕事。
🤿未知の世界へ。
終盤までの溜めが長いので、訓練生になってからは文句なく面白い。
リアリティが高めで、ドキュメンタリーのように楽しめる。
宇宙飛行士、というなんだか得体のしれない職業を目指して努力してきた男の足元が固まってゆく過程も気持ちいい。
伝記にありがちな予言者が控えめでありがたい。
歴史に残る偉人でも、未来がどうなっているかなんて分からない。ただ我武者羅に今を生きている。
それまでの障壁が嘘のように道が開け、勝ったな、と喜べる瞬間はほんの一瞬。
そこからまた新たな挑戦がはじまる。
【映画を振り返って】🍇🛻
ポスターの時点ですでに苦手で二の足を踏む。しかし、ロッテントマトとIMDbの両方で高評価では、見ざるをえない。
案の定、悶絶するほど退屈な王道路線。捻りもなければ刺激もないが、その分、親しみやすい温もりがあるので、多くの人に愛される性質を持っている。
物語の性質上、2周目に入ると違った感情で見られるからお得。
ギャグ満載の伝記映画の偉大さを痛感する一方で、意外と各場面に何かしらの遊び心や落ちをつけて、退屈させたくない工夫の後がうかがえる。
👨🏾🍼夫婦関係は現代的に。
女性監督だけあって、男性が夢を追う身勝手さ。女性が子育てしながら夢を追う大変さが、さらっと描かれている。
親族への負担の大きさに関する台詞は少な目だが、見れば分かる作りになっているのがお洒落。
宇宙の話も少なく、ほとんどの時間が家族のために使われているので、いかに周囲の支えが大切なのかを物語っている。
宇宙への関心が高い70年代の子供たちの成長から、脂が乗った0年代までの長い旅が楽しめる本作。
一念岩をも通す。
何度壁にぶち当たろうとも、夢を叶えるために最後まで諦めずに努力しつづけるホセの姿が人々の胸を打つのかもしれない。
人生は広大な宇宙のように無限の可能性を秘めている。