コウ

劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦のコウのネタバレレビュー・内容・結末

4.4

このレビューはネタバレを含みます

原作既読&アニメ視聴済。
すごく良かったです。泣きました。
劇場版として映画館の大スクリーンで彼らの試合を観ることができた嬉しさと、素晴らしい試合を観た!という清々しい気持ちで胸がいっぱいです。

映画では研磨と日向にスポットを当てているので、他の選手たちやプレー展開などで原作からカットされた部分が多いです。
それは残念ではありますが、逆に補完的にプラスされている台詞などもあり、全体的にきちんと原作に沿ったストーリーで違和感なく仕上がっています。監督の原作へのリスペクトを感じました。

上映時間が実際の試合時間である85分というのがまた良いです。映画の上映時間としては短いのですが、この85分間に彼らの青春がギュギューッと詰まっていました。

日々の練習での嬉しさや悔しさ、これまで戦ってきた選手たちから学び与えられたもの、応援してくれる人たちの想い、はたまた許せなかった過去の自分や後悔、流した涙…。たくさんのものを糧にして励んできた結果として勝ち上がり、戦いたかった相手といま同じ舞台に立っている。
そんな音駒と烏野の選手たちの戦いを、会場で観戦している観客と同じような気持ちで一観客として見せてもらったような気がします。

この試合はもちろん音駒vs烏野の戦いなのだけれど、日向にとっては ”研磨にバレーを楽しいと思わせる” ための勝負の一戦でもあって。
試合の勝敗とはまた別の、絶対に負けれられない、負けたくない勝負。それに勝ったと分かった時の日向の叫びから、その感激が伝わってきてグッときました。
日向の喜び様に反して、え?何だ?という周囲の分かりやすい反応も、これが ”二人の勝負” だと強調しているようで良かったです。
そして研磨のあの心底楽しそうな言い方よ… 声優さんてすごいなと改めて感じました。

日向と研磨はポジションもタイプも性格も全く違うけれど、ライバルって決して分かりやすい相手ばかりがそうではなくて。この試合を観ると、改めてこれを好敵手と言わずして…という気持ちにさせられます。友達なのに喉元にナイフを突きつけ合うような勝負ができる相手なんて、人生でそう出会えるものでは無いですから。

そして何より、クライマックスの研磨視点での今試合ラストプレー。
この数分間が本当に素晴らしかったです。こればかりは紙面では表現できない、映像でしか伝わらない見せ方で、息をのむような臨場感のある演出で最高でした。バレーボールをやらない人間からしたらあの視点を体感する事なんて無いので。めちゃくちゃドキドキした〜!

“スパイカーの前の壁を切り開く”
レシーブによって研磨に閉じ込められた日向に、影山がセンターオープンで時間という道を作るシーン。このシーンで一番泣きました。
研磨は ”100%で飛べない翔陽に影山は興味がない=トスを上げない” と考えていたけれど、影山は ”だったら俺が日向を100%にする=100%の状態で飛べるようなトスを上げる” んですよね。
疲労や相手の戦略により最大値が出せない状況が研磨の言う100%でないと言うのなら、日向をその最大値まで引っ張り上げる選択をすればいい。スパイカーの前の壁を切り開く為に居るのが、セッターである自分の役割なのだからと。
”俺がいればお前は最強だ”と言った影山の言葉が脳裏を過ります。
ここまでの日向の表情や動きが、映画だと原作よりも辛そうなのが伝わってくる描写に感じられて、だからこそ、この高く上がった美しいトスを見た日向はどれだけ嬉しかっただろうかと思うのです。
また、原作だと中学時代の日向がこの高く上がるトスでひたすら練習してきた描写があるんですよね。その過去を知っていると感慨も一入でした。

”おれにバレーボールを教えてくれてありがとう”
日向と全力で戦ったこの試合がなかったら、研磨がこの先の人生でこの言葉を言う事はなかったかもしれません。
これは日向と研磨の勝負の結果として出た言葉だけれど、日向だけでなく、幼い頃から誰よりも研磨を理解して一緒にバレーをしてきた黒尾にとっても、研磨の ”楽しい” は聞きたかった言葉なのだろうと思います。
研磨が楽しいと思えた試合が黒尾と共に戦った最後のこの試合で、その場所でこの言葉を伝えることができて本当に良かったと、二人の友情を思って涙が溢れました。

”またね、翔陽”
初対面での出会いで研磨が別れ際に日向にこの言葉を言うのですが、同じ台詞をこの試合終了後にも言っています。
出会いの際には単に練習試合で再会するから言った “またね” だったのが、“また来年もここで会おう” という意味の言葉に変わるんですよね。この試合を通してバレーが楽しいと心の底から思えた研磨が ”来年もまた翔陽と全国で戦いたい、楽しい試合がしたい” と純粋に思っているんだろうなと考えると、同じ台詞だからこそ感慨深いものがあります。

他にも、鳥籠の演出あれこれや、汗によってボールが滑るシーンの描写、病室での烏養前監督のTV画面へ向けた握手、日向と研磨以外の選手たちについて等々、もうたくさんあるのですが長くなるので割愛します。

観賞後に “良い試合だったな”と素直に思える作品でした。
第一弾特典の33.5巻も最高でしたね。
公開中にあと何度か足を運ぶと思いますが、今夏公開予定の続編もいまから待ち遠しいです。
コウ

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