おいなり

劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦のおいなりのレビュー・感想・評価

3.8
最高すぎた。激アツすぎた。
この映画には「ハイキュー」という作品のコンセプトが詰まってる。

音駒戦が数ある烏野の試合の中でベストバウトというわけではないし、最強の敵というわけでもない。と思う。
でもこの試合にはハイキューの良さが全部入ってる。それは「バレーボールって超楽しい!」ということだ。



僕はあまりスポーツの勝敗には興味がなくて。
ナントカジャパンがベスト8だとか、オリンピックで誰かが金メダル獲ったとかのニュースにも、ただの「結果」である勝敗に対して、世間ほど熱くなれない感がある。

なのでスポ根漫画の、勝つために死にそうな思いをして練習だの特訓だの、そういうシークエンスを観てても全然気持ちが昂らないのは、学生時代の部活動を通して、ああいうアマチュアスポーツが無意味な不条理に満ちた偏見製造施設であることを知っているからだ。

しかし、ハイキューを見ていると、胸の奥にマグマを流し込まれたような熱さを端々に感じる。ほぼやったこともないバレーボールという競技が、至極楽しそうに見えてくる。

それはもちろん物語の描き方もそうだし、キャラクターの表情もその一因で、アニメになって超絶作画による動きと林ゆうきの激アツ劇伴がつくことで、その魅力がさらに増している。
そして何より、その戦いが「敵との勝負」ではなく、ある意味で苦楽を共にした仲間との勝負であるという点が、競技の楽しさへの純粋性を強調しているように感じる。

白鳥沢戦、青葉城西戦という「ラスボス級」のピークを越えてもなお、上へ上へと登り続ける本作の熱さは、まさに少しでも高く、疾く、ボールに触れるために限界を超えても全速力をやめない本作の登場人物を象徴するようだ。



ハイキューという物語の主役は、日向と影山という変人コンビを中心とした烏野高校だが、この映画の主人公は、この「バレーの楽しさ」という作品根幹のテーマを体現する研磨と音駒高校だ。
象徴的なライバルとしては異例のアンチ熱血キャラである研磨が、その自分を曲げないままバレーを好きになっていく過程こそが、本作が感動を呼ぶ最大の要因だと思う。

なぜそんなに一生懸命になれるんだろう。

なぜ汗まみれで苦しい思いをしてまで練習するんだろう。

その理由としてハイキューが提示するのが、バレーが楽しいからというシンプルな答えで、勝敗よりもそこへ至る道筋を丁寧に丁寧に描いた本作は共感度が高かった。



友情・努力・勝利の現代的解釈、洗練された泥臭さがハイキューの良さだなぁと思っていて、それをちゃんとアニメスタッフが理解した上でアレンジ・昇華させているのが素晴らしい。
アニメでしかできない表現方法で、超面白い原作を超えてやるという気概を感じて良かったですね。ラストの研磨目線の1分間、めちゃくちゃスピード感のある映画の中で恐ろしいほど長く感じて、この演出の「手玉にとられてる感」が心地よかった。

因縁の対決、というには意外なほどアッサリした2本先取の試合なんだけど、それが逆に短い時間に凝縮した感があって良かったかも。
前置き少なめで冒頭から試合が始まるのも、ちゃんと視聴者が観たいものがわかってるな、という感じがして。試合中の回想は少し多めかなーと思ったけど、ギリギリでバランスは保ってたかな。

原作読まずに来たので、どっちが勝つのかわからないハラハラ感がほんとにスポーツ観てるみたいで楽しかった。ここぞという場面で流れる「上」「コンセプトの戦い」という名曲たちに、沸騰した血液がじゅわあと体中を巡るような興奮を覚える。劇伴はアクが強ければ強いほど好き。
おいなり

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