吉倉光希

劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦の吉倉光希のネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

あぁ、私が部活に費やしたあの青春の日々は、きっとその後の人生を輝かせるためにあったんだろうな。

なんかそんなことを感じた映画だった。


「もう一回がない試合」。

負けたらそれでおしまい。1月だから、「同じ人たちでもう一回公式戦をやる」ことだって永遠に叶わない。正確には可能かもしれないが、「同じ肩書き」でやることは、最低限2度とない。たとえ同じ高校メンバーとしてやることがあっても、同じローテが回ることはほぼないだろうし、「OB」になる。

部活なんて受験になんの意味もない、と言う話もあるけど、その時間に価値を見出せるかどうかは、やっぱりその人次第だと言うことなんだろう。


アニメ1期は見終えたけどその先は見ることができないまた参戦となったから、正直分かってないこともたくさんあるのだけれど。

それでも、

日向くんはどんなに苦しくても飛んで、
影山くんは日向くんを信じて自分にできることをちゃんとして、
月島くんが前向きに試合をしていて、
山口くんがちゃんとサーブを決められて。

何よりも、けんまくんが、楽しめて。

結末としては、音駒にとってはとても辛い物になったなと思ったんだけど、後腐れなど何もなく、ただ目の前の結末を認めて、相手を称えて、背中を押す姿は、高校生ならではの良さがとてもあったなと思った。

そう。
結局、「1校以外は、タイミングが違うだけで末路は同じ」。
それでも、本気で「それ」を求める限り、人はきっとそれ以上の「何か」を目にすることだってあるんじゃないかな、と思う。
これはもしかしたら、私がそう信じたいだけかもしれないけど。

でも、スポーツじゃなくても、何かしらの大会に出たことがある人ならわかるんじゃないかな。

終わりたくない。
まだずっとここにいたい。
みんなといたい。
みんなと、まだ、楽しんでいたい。

その一呼吸の先に何があるかなんて誰にもわからないけれど、それでも足掻いて、もがいて、手に入れようとして、でも取り落とすこともあって、こぼれ落ちた物をみんなで悔やんで、手に入れられたら大切に抱きしめてみんなで喜んで。

その時間が、何よりも大切だったのかもしれない。

演出にこだわり抜いていて、セッター、ミドルブロッカー、スパイカー、サーブ、ブロック、レシーブ、トス、全てが「素晴らしく躍動的に見える角度」で進み、呼吸の音、体育館で擦れるシューズの音、歓声、合図、ボールを見失ってぐるぐると回る目、落ちてくるのを待って見上げ続ける、高い高いボールと、その先の天井。見たことない景色のはずなのにわかる気がして、あの「最後の1点」の没入感は、特にすごかった。試合を全て見ていても、目が辛くなかった。目まぐるしく変わっていて目への負担は大きいはずなのに、「辛い」とはこれっぽっちも思わなかった。これは、計算尽くされたこの作品がすごいことの証明でしかないと感じている。


試合はもちろんだけれど、今回は「けんまくんに楽しいと言わせた」翔陽くんこそ、きっと誰よりも「勝利」したのだと思う。

でも、その「勝利」だって、クロくんがけんまくんを誘わなかったら、その誘いにけんまくんが乗らなかったら絶対あり得なかったことで。
それはつまり、どんな形であれここでも「つなぐ」バレーが起こした奇跡と、言えるんじゃないだろうか。
どんなにけんまくんがやる気なく見えても、クロくんがずっとそばにいてくれたから、けんまくんは「自分の意思」で、あの場所にいることを選べるようになったんじゃないかな。わかんないけど。

「ありがとう」って、やっぱりいい言葉だね。


これは、影響を受けた私の話なんだけど。
そういえば、吹奏楽の「最後の音の余韻」が消えるあの瞬間が、そこまで好きではなかったような気がした。「余韻の残った音」は好きなのに、「消える瞬間」はそこまで好きでは、なかった。
あの、夢から覚めてしまうような、拍手直前の数瞬の無音の時間が。
そんなことを、ちょっと思い出した、いい夜になった。



P.S.スガさん思ったより煽るのね????w
吉倉光希

吉倉光希