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春の画 SHUNGAのKUBOのレビュー・感想・評価

春の画 SHUNGA(2023年製作の映画)
4.0
今日の試写会は『春の画 SHUNGA』。

先日『春画先生』という春画を扱った映画も見たが、本作は最近注目を集めている「春画」を掘り下げたドキュメンタリー。

以前、箱根の岡田美術館で一部「春画」のコーナーがあり鑑賞したが、黒いカーテンで覆われたその春画コーナーは、やはり何か禁断の匂いがした。

はっきりと描かれた挿入された性器のアップ。どうしても江戸時代のエロ本という先入観が拭えなかったが、本作を見て、本当に勉強になった。

「春画」が他国のエロスを扱った絵画と決定的に違うのが、絵師が一流だ、ということ。

葛飾北斎、喜多川歌麿、鈴木春信、歌川国貞etc. 当代きっての浮世絵の巨匠たちが真剣にその技巧を奮って描いている。

『春画先生』でもフィーチャーされていた北斎の有名な「蛸と海女」。タコを相手に性交を楽しむ海女さんのなんとも変態なことよ。

鈴木春信の「風流艶色真似ゑもん」なんて「マネえもん」という小人が日本全国のまぐわいを覗いて周るという、なんともコミカルなピーピングトム(笑)。

この「蛸と海女」と「真似ゑもん」では春画をアニメーションで表現する試みがおもしろい。

源氏物語のパロディー「正写相生源氏」(歌川国貞)や、『南総里見八犬伝』の伏姫と八房の獣姦なんてものまである。

江戸時代の人たちのセックスへのイマジネーションの自由さに驚かされる。

また「彫り」と「摺り」の高度な技術にも驚かされる。現在では再現できないと言われている、細くて曲がりくねった陰毛を板木に掘る。どうやって掘ったんだろう? 驚嘆するしかない。

2013年、ロンドン・大英博物館での世界初の大規模な春画展が開かれてから、それまで「猥褻」とされてきた「春画」がアートとして捉えられるようになったと言う。

だが、作品の中でも、また本日トークショーで登壇された山田五郎さんもおっしゃっていたが、日本の「春画」は、西洋のアートの概念に入れてもらって喜ぶようなものではなく、もっと自由な発想を持った日本独自の文化であると。

最近では「春画女子」と呼ばれるファンも出てきて、「春画」が広く美術愛好家にも受け入れられるようになってきた。

正直、イヤホンガイドして美術館回るよりも、よーく「春画」について学ぶことができた。

『春の画 SHUNGA』、たいへんよくできたドキュメンタリーであった。「春画」に関心を持った方は、ぜひ。
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