netfilms

車軸のnetfilmsのレビュー・感想・評価

車軸(2023年製作の映画)
3.8
 地方の裕福な家庭で育った女子大生真奈美(錫木うり)は、資産家でゲイの潤(矢野聖人)に連れられて歌舞伎町のホストクラブを体験する。2人は互いに同じ渇望を抱えている事を知り、加速度的に惹かれあってゆく。いわば現代の世界線であるトー横キッズの売掛金(ツケ)問題とも無縁ではない。お気に入りのホスト聖也(水石亜飛夢)を媒介者として繋がり、真奈美は潤を知るためにやがて3Pに走る。口づけから始まるSEXシーンのどうしようもないエロス。ジョルジュ・バタイユの『マダム・エドワルダ』の主人公エドワルダ(TIDA)の全身全霊の演技に、落雷に打たれたかのような衝撃を受けた真奈美が性に奔放に突き進む一方で、自身の性に苦悩する潤は自分自身の心を開放することが出来ない。

 LGBTQIA+に関してはそれぞれの感性はあるのだろうが、ネオン管に照らされた新宿歌舞伎町のぎらついた欲望は画面から伝わる。現在、およそ200件あるとも言われているホスト・クラブの光と闇も「色恋」を通して毎晩繰り広げられるが、恐らくホストの側も自分自身もある種の鏡像で金に執着し、恋に執着するのは自分自身の心の欠損を埋める行為なのだろう。相変わらず場末の昭和感を醸し出すリリー・フランキーはこの手の人物が実際に居たなと見紛うほどの見事ななりきりぶりで圧倒的な印象を残す。そして真奈美の生き方を肯定出来ない両親を演じた奥田瑛二と筒井真理子の一瞬の存在感と芝居の巧さは出色の出来で、端役のキャスティングも踏まえた松本准平のあしらいの妙に唸りつつ、ホストとしてゲイとして生きる男連中よりも主人公の真奈美の業を受け入れて全てを赦す作業にエドワルダは宿り、女は強しを実感する。東京では歌舞伎町のtohoと池袋のシネマロサという絶妙な場所で公開されている。
netfilms

netfilms