Renz

アイアンクローのRenzのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
3.7
誤解を恐れずに言うと、私はプロレスはマジックに近いものだと思っています。

タネを気にする人もいれば、純粋に、めくるめく繰り広げられる激しいぶつかり合いや、華麗な技を楽しむ人もいます。
しかし、その激しくぶつかる肉体も華麗な技も、血の滲むような努力と、肉体の酷使によるものなのです。
ときには筋肉増強剤に手を出したりして、無理がたたり、早逝してしまうレスラーもいます。
そんなレスラーにはどこか哀愁が感じられ、その人生はドラマがあります。
だからこそプロレスファンは感情移入し、熱くなり、ときに涙するのです😂。

そして本作、主人公次男ケビンの父フリッツ・フォン・エリックは、日本ではアントニオ猪木とジャイアント馬場のBI砲と戦いを繰り広げたレスラーです。得意技はもちろんアイアンクロー。
主人公のケビンや弟のケリーたちも日本で藤波辰巳等とやり合ったりしてるので、日本とは縁のあるレスラーです。
その時代、80年代の雰囲気の再現が素晴らしいです。特に試合の描写が凄くて、役者の肉体の作り込みもあり、まるで本当に当時のレスラーが試合しているかのようです。
とはいえ、私は世代じゃなくて当時の試合を観てはいませんが…😅。

この映画は有害な男性性の物語です。
父フリッツは早逝するという一族の呪いを、強くあることで克服しようとします。それがいつしか自分が獲得できなかったNWAヘビー級チャンピオンの座に固執するようになり、息子たちに託し、強いるようになってしまいます。それこそが呪いとなり兄弟に降り掛かってきます。

つまり、男親にある自分の息子に自分の叶わなかった夢を託すという。悪しき星一徹というべきものの呪いと、それに翻弄されながら生きている兄弟たちの絆の物語です。

そういった物語だからこそ、それがしっかり描かれているからこその問題があります。

せっかく時代の再現も素晴らしく、主人公ケビン役のザック・エフロンも素晴らしい肉体で、試合も本物みたいなのに、肝心の試合をカタルシスあるものとして魅せてくれないのです。

そりゃたしかにプロレスは父親からの呪いとなってしまう面もあるだろうけど、間違いなく輝いていた瞬間はあるわけで、大舞台で沢山の観客の声援を受けながら、激しい試合を繰り広げるプロレスの魅力、兄弟たちがレスラーとして輝く瞬間をもっと魅せてほしかったです。

特に三男ケリーのリック・フレアー(ネイチャー・ボーイ!狂乱の貴公子!!)との大一番、NWAヘビー級タイトルマッチはしっかり描くべきでしょ!
それに主人公ケビンの息子はプロレスラーになってるんだから(ノアにもいたぞ)、ケビンはプロレス自体を避けてるわけでなし、もっとプロレスを魅力的に描いてよ!!

うーん…昨今の映画は抑制がきき過ぎている気がする。自分がそんな作品ばかり観ているせいかな?
真面目なのはいいことなんだけど、もっと観客を楽しませる要素が欲しいって!😤
Renz

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