イワシ

アイアンクローのイワシのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
3.8
フォン・エリック一家の映画であり厳密にはプロレス映画ではない。勿論、それは意図的なものであり作品の瑕疵ではない。『カリフォルニア・ドールズ』や『パラダイス・アレイ』、『レスラー』と異なり終盤に試合が配されないものの「立つ」ことは反復される。回想と思われた場面がそうでないと分かる足のアップに落涙。
回想に見せかけた空想のシーン(空想じゃないかもしれないけどここではとりあえず)、想起している主体はザック・エフロンであろうがコンクリートの床にスープレックスされてもなおリングまで這いずり上がり、立ち上がった男があのような場面を想像してたと思うと泣けてくる。ザック・エフロンのそれはワンカットで撮られていたけど、ジェレミー・アレン・ホワイトは顔を映してからジャンプした瞬間に足元へカットが変わるように演出していたので、苦痛を伴う身体的な動きと想像上の開放的な動きを対比的に演出しているあたり、やっぱ上手いなーと思う。

ザック・エフロンと義足のジェレミー・アレン・ホワイトが夜に手製のリングでトレーニングをしている場面、長回しで二人の諍いと和解を捉えつつ緩やかにズームするカメラはやがて二人をフレームから外し、背景の懐中電灯にフォーカスする。アルトマン『ロング・グッドバイ』のスターリング・ヘイドンの入水シーンを想起。

劇中のプロレスのアクションに関して、映画的であるかはともかくプロレス的であるかはまったく語ることはできないが、冒頭の試合で相手選手のセコンドに妨害されてからのホルト・マッキャラニー乱入はこの競技のハプニング性とドラマ性を描けていると思う。
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