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アイアンクローのCinemaUpperのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.8
普通に家族を慈しみ自分なりの個性を以って等身大の生き方をしたかった…大物レスラーの息子なだけの至って従順の兄弟達が紡ぐ悲しき大草原の小さな家

“長男症候群”なケビン、プロレス者としても賢弟としても200点満点なデビット、最も大成し最も残酷な業を背負うアスリートケリー、そして淳朴で音楽好きな好青年ながら一家の名声に白虎隊の如くリングに学徒動員されていくマイク

本当にコレA24なのかな?と疑うほど次々に好人物が呈示される展開は、歴代最も陰惨な運命を辿る“プロレス史上最凶のホラー”の生贄に余りにも相応しい

割に時系列で堅調に整理されたストーリーは決して華美なエモーショナルを誘う物ではないが、フリッツ夫妻の人格の歪さ、成金嗜好が招く愚かさ、おクスリ全盛で無理矢理カラダをデカくしハードワークを強要する当時のプロレス環境の苛酷さが、ケビンたち兄弟をジワジワ人体破壊していくエグさはどういったら

特に素晴らし過ぎる再現力のプロレスシーンの中から、リック・フレアーの“自身の宗教にも近い信念”を豊潤に含んだネイチャーボーイトークが、父フリッツが浴びせた呪詛と重なった時は余りのグロさに吐き気を覚えたほど🤮

兄弟たちのハグを見る度に、あの日親子鷹として過度に応援し羨望し期待し…時に失望してしまった子供の時の自分の頭を握り潰してしまいたくなったのは気の所為だろうか…

あんな素敵なラストなら、是非六男クリスもおくって欲しかったのだが…
史実を大胆な静かな脚色で描いた期待に違わぬ戦慄の感動作😭
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