レオン

アイアンクローのレオンのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.3
実話ドラマ高評価話題作 (★平均4.0 近隣シネコン)
私はこういう正攻法の作品が好きだ。 まるで70~80年代の映画の様に、なんの飾り毛もなくシンプルに物語を進める。 が、始まりからエンドまでスクリーンに引き込み、没頭させる。  物語に魅力あれば、時間軸の移動や、伏線の挿入、過激なシーン等、小手先の演出は一切不要という事を教えてくれる。 
(今作でA24はどんな作品も制作できる企業だと理解した。 逆にA24だから今回は、とことんシンプルに拘って制作されたのかとも考えられる。)

冒頭、父のフリッツ・フォン・エリックの現役シーンのみ白黒だが、すぐに息子達シーンでカラーに。 兄弟の活躍する進展だけでなく、何気ないシーンで各自の性格も描写していて、飽きさせない。 
特に実直で兄弟の面倒見がよく、女性にうぶなケビンに感情移入して好きにならずにいられない。 

作品中何度もリングシーンが描写されるが、早いカット割り等なく、まるで80年代のプロレスTV中継の様に、引いた映像で自然に見せる。 
それらもアクションシーンとしてではなく、物語の進行上に必要なシーンとして描かれている点も今作の特徴。
(実際の当時の技を見せ、それも全て役者自身が演じているので、実際に各自が痛みを感じているそうだ♪)

これらハリウッドのスゴイところは、映画の為の作られた映像をいう事を全く意識させない点だ。 役者の演技ももちろんだが、映像のトーン・小道具・車・建物も正に80年代に撮影したのかと錯覚させるぐらいに本物をスクリーン上に表現している。 (邦画だとこうはいかない)

物語前半は兄弟でフットボールや末っ子のバンド参加等、変化ある好転シーンで引き込み、時間経過もかなり早い。
が、後半は何度も兄弟に悲劇が襲う。 
これがフィクションなら過剰な脚本と感じてしまうが、事実なので逆に「嘘だろう・・・」とシンパシーを感じずにはいられない。

その悲劇シーンはあえて描写せず、見る者に想像させるという演出で、物語の進行以上に頭と心を動かしている点はかなりの大人演習に感じる。
脚本も書いているショーン・ダーキン監督は、過去にパッとした作品がないのが不思議に思うくらい、ベテラン味を出せていると思う。
(実際の悲劇は作中に描かれてない事もあり、もっと過酷・・・)

好転シーン・暗転シーンのそれぞれに目頭が熱くなる事が何度もあり、
観てる最中から、じわじわと心に訴える。 
鑑賞後は、久々に "懐かしくいい物" を見せてもらったという思いに♪
(2時間10分の作品時間も、体感1時間45分位だった♪)

オススメです!

尚、主演 ザック・エフロンは、モテそうなハンサム役から脱却して、責任感の強い兄弟の長を力強く自然に演じる事に成功している。 その体はただ、筋トレで筋肉を付けただけでなく、幅を増して本物のプロレスラー体型に仕上げている点にも驚く。 

二枚目俳優はいつかは、"味のある男"に変身出来ないと、長い俳優キャリアを全う出来ない。 
デビューからずっとかっこいい二枚目で活躍し続けている俳優は、世界的にもトム・クルーズぐらい♪ 
 

PS=
フォン・エリックという名前は、父親デビュー時にナチの悪役として売り出していた時のドイツ人らしい、リングネームで本名ではない。 
この"フォン"というミドルネームは、かなり高貴な者が多いらしく、デビュー当時の50年代はプロレス=見世物的ショーというイメージもあった為、職業的に見下される事を嫌い、高貴なミドルネームをあえて付けたというエピソードも♪

必殺技の「アイアン・クロー」は握力 120kg 以上がなせる技!
胃を掴む場合は「ストマック・クロー」と呼ばれる♪
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