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アイアンクローのCinemanのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
2.8
A24式の伝記映画の作法を開拓した作品。
ザック・エフロン、いい役者になりましたね。

この映画はプロレスの映画ではなく、あくまで家族の悲劇についての話...
チャップリンは、近くで見れば悲劇、遠くで見れば喜劇と言いましたが...本当の悲劇は遠くから見ても悲劇なのかな。

はじめは特にすごく三人称的な進行というか。ケビンがメインとはわかるものの、引きのショットも多く特にプロレスシーンはそれが影響して迫力を欠くというか...
A24のドライさが仇になってる。
当時のテレビ放送のアングルをなぞるような雰囲気。
随分と平板な進行具合で、テレビ映画的だなあ、映画館で見る必要なかったかななんて辛口に。
1970sを描くときに、当時の画風や作風にこだわりすぎて、再現劇のようになっちゃったのかな、とも思ったくらい。

伝記映画に求めてたものが、史実では見えてなかったもの...つまり誰しもが「悲劇」と思っている出来事なら、その水面下にどういう人間模様があってそうなったの???という「悲劇」以上の人物のストーリーが描かれるのを期待してると思うんです。
でもそれが見えてこないのがこの作品。「悲劇」を「悲劇」として撮っただけのように思える。

実在ものなので、ご存命の方の心情とか色々あるから難しいのは百も承知ですが...
多分これを単に作品として見た客が1番気になる人物って両親だと思う。特にお母さん。この人、水面下で何が起きてこうなったか..という人間ドラマのかなりの鍵に見える。でも特に描かれない。父親に同調してたくらいしかわからない。両親それぞれがプロレスと宗教という信ずるものに傾斜してたのは強調してたけど、なぜ??というのはもう見えない。
でもほんとはそこが面白かったはず。伝記ではそういうのが見せてもらいたいはず。
後半に兄弟を失っていきケビンは何を思うか..とようやく絞られてくるんだけど、ご存命のケビンさんの視点に寄り添いすぎたかな、逆に..
パムの描き方見てても、単に女性描写が稚拙ということかもしれないけど...

うーん伝記映画、奥深いし難しい。

音楽センスもちょっと大味だったかなあ。

あとテキサスが舞台だけど、南部訛りをほとんど感じなかった??
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