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アイアンクローのemuaarubeequeのネタバレレビュー・内容・結末

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

元プロレスファンとして伝説のレスラー、フリッツ・フォン・エリック一家に起きた悲劇は知っていた。てか、それ以前に、男4人兄弟で、そのうち3人が両親より早く死ぬ、ってひどい物語だ。でも目が離せなかった。兄弟がただわちゃわちゃしているシーンだけでもう涙が出るからライター失格。

ここから下はネタバレあるので、映画を見たいひとはUターンしてください。















長兄ケビンを演じたザック・エフロン、すばらしい。引くほどのパンプアップ。20代から中年までを物語る顔芸。なにより試合を撮るカメラワーク、すごい。「レスラー」超えて来た。ハリー・レイスやリック・フレアーのキャラがリアルで最高。ジーンときたのは、劇中で流れるロックが、ミュージシャン志望だった末弟マイクの部屋に貼られたポスターのバンドとちゃんとおなじだったこと。おれもラッシュやトム・ペティ聴きたくなったよ。あれは本当にマイクの趣味をリサーチしたのかなあ。だとしたら心から敬服する。本当に大事なディテールだから。たとえば「聖の青春」で、原作を読んでいれば絶対に絶対にボストンの「宇宙の彼方へ」を流さなくてはいけなかったのに流れなかった(たぶん金銭面で)というヘマはしない。アメリカ父系社会の敗北、ともいえる。自分が果たせなかった夢を息子たちに託すフリッツ・フォン・エリックはDV野郎でこそないが、息子たちは絶対服従イエッサー。そんな関係性も含めて素朴で孤独な狂気は確かに特異に見える。でも、一代で家業を成した事業家とか、アメリカ社会だけでなく、どこにでもいるThe 父に内在された普遍でもある。ケリーがクリスマスプレゼントとして父に渡す銃は、父を殺すためか、あるいは自分を殺してもらうためのものだったはず(結局その銃で自ら命を断つ)。ケビンが父から受け継いだアイアンクローは最後に父を殺めるものになったかもしれない。ラストに父を殺さずに、母によって「すべてを失った」という残酷な罰を生きたまま受け入れさせる、というストーリーは、ある程度事実に則しているとしても、とても示唆的と感じた。ふ
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