びらびらマン

アイアンクローのびらびらマンのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.4
「プロレス」と「痛み」を結びつけ、見過ごして過ごしてきた生傷にもう一度向き合ってくれる作品で心揺さぶられました

やはり、期待等の感情は呪いになり得ますね。
「期待している」なんて聞こえがいいですが、本作はそれが苦しみになり、呪いと化し、地獄へとエリック家を連れて行きます。

というか、「期待」という感情は他者に向けるプラスの感情ではなく、期待をするという行為は自己中心的な自分の内側に向く感情であるとすら感じた。

「自慢の息子になるよ、父さん」というセリフからわかる「家父長制」という柵、リングから降りられない、苦しみに耐えるしかない人生そのものをプロレスに見立てる演出が見ていて苦しくなる程です、、

また、本作は楽曲の良さに加えて、兄弟愛・4人兄弟の青春を本当に美しく描いていて、その分常に付き纏う地獄への落差を感じられます。

ただ、本作は最後は地獄で終わらず、リングから降り、父というアイアンクローから逃れたケビンが得ることのできた「家族」が救いであったし、守れなかった兄弟と重なったラストシーンは流石に泣けます。
リングから降りて生傷にもう一度向き合う、鑑賞者に寄り添ってくれる。