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アイアンクローのyuzameのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
3.0
父の幼稚な野望に必死に食らいついていく
兄弟の話。

まずは触れない訳にはいかない
キャスト達の肉体改造ぶり。
異様なまでの筋肉。
「異様」に見える事が肝だと思った。
素晴らしかった。

とにかく競争すること。
他人に勝つこと。
勝つまでは、そのために払った犠牲や
努力の価値は認めないこと。
他人より優位に立つこと。
他人を支配すること。
悲しくても泣かないこと。
身体をいじめ抜くこと。
具合が悪くても認めないこと。
手に負えない問題は放置して
目標を追うこと。

父の教えを守った(守れた)息子達が
次々に死んでいく。

ケビンは教えを守れなくて命が助かった。
勝てないことを認める。
悲しい時には泣く。

とにかく酷い父親だった。
ビデオゲームでもやってるかのよう。
1機死んだら次の1機で。
自分の目指すゴールに向かって
息子達を使い捨てる。

「家族で力を合わせて」などと言いながら、
わざと軋轢を生むような事をする。
やっと辿り着いたタイトル戦に
ケビンを差し置いてジャックを指名。
ジャックの方が勝てそうってのが
大きな理由だとは思う。
でも、兄弟の仲を悪くしたいという欲求の
表れでもあったと思う。

弟達は皆んなケビンを信頼していた。
(侮ってはいたけど)
自分は恐怖で
息子達を言いなりにはしてたけど
信頼関係は築けてないと分かってるから
息子達を試すような命令をする。
あからさまにケビンを虐げる。
ケビンが羨ましくて面白くないから。
そう見えた。

悲しみは「無視するもの」
という価値観の父親。
というか、全ての問題を無視しても
目標が叶えば
自動的に問題は解決する、という
あまりにも幼稚な理論を子供達にかます。
母親は、
問題は「全ては神の思し召し」つまり
黙って耐えろ。

衣装のスタイリングや
何よりヘアスタイリングか最高だったな。
マジでだっせーのw

ザックエフロン良かった。
前回見たのがテッドバンディだったから
全っっっ然違うキャラクターを演じてて
余計にそう感じたのかも。
勘違い万能感を
全身に漲らせた男から一転して
もの凄い体躯とはアンバランスな
優しく弱い男。

登場シーンから鮮烈。
アホほど盛り上がった大胸筋の上に
乗ってるにはめちゃ不似合いな
小花柄のパッチワークキルト。
それをめくって出てきたのは
白ブリーフ一丁の成年男子。
どう考えても
親の庇護の元から抜けてない。
子供部屋で暮らす筋骨隆々の男。
ハッキリ言って若干気持ち悪い。

突然家族を亡くすという幼児期の体験から
「家族の為」で思考停止してしまうケビン。

息子達の純粋培養された、
世間知らずな姿が
なんだかずっと痛々しかった。

色んなレスラーのマイクパフォーマンスが
「男らしさ」の気持ち悪い部分を
繋ぎ合わせたようなセリフばかりで
この時代の
プロレスの受容のされ方を思うと
暗澹たる気持ちになった。
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